みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正7年(1918)

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[表]
消印9月1日午前8時-9時
青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
    本郷曙町十三
     寺田寅彦


[裏]
拝復津田君の論は面白いと思ひます、尤も僕は主観客観といふ言葉はほんのコンブェンショナルなものとしか思つて居ないから此れに基いた区別はそれ程大事と思ひません、又線自身は面白くてもそれは画の構材としか思はれない、此等から構成した「世界」といつたようなものでなければ芸術と名〔づ〕けたくないのです、仮令(たとえ)ば書などは芸術と思ひません、音楽なら単純な楽音もしくは原始的な旋律のようなものだと思ひます。」しかし津田君が此の原始的のエレメント迄一返退却して其処からエレメントの合成に進むならばよかろふと思ひます如何でしょう」ホトヽギスの山会は一寸読んで見た しかし余り問題にする程の事もないと思ひました、唯干駄木の文章会の事を思ひ出して四方太を想ひ出しました、四方太の尤らしいような人を馬鹿にしたような顔と其笑声を、」今度の全集配本は始めから読んで居ます、やつぱり面白い。満洲旅行中あんなに胃が悪いのにあんなに無理をしてゐるのが残念でたまらない、先生の寿命はあの旅行で半分以上縮められたような気がする、そして中村さんや橋本左吾氏が怨めしくもなる、そしてなぜそんなしなくてもいゝ辛抱をしたかと先生が恨めしくなる。」
     八月卅一日