みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正11年(1922)

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[表]
消印31日(?)午後2時-3時
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町
     十三
        寺田寅彦


[裏]
「火鉢」の句、前置付の句いづれも敬服、殊に後者は芭蕉に肉迫して居ると思ひます。御説の通前者は推敲の余地があるかも知れません。試に「火鉢」に和して「墓地の空行く木枯の声」として見たがどうもいけません 或は「麻布へ抜ける木枯の音」の方がいゝかも知れんが大兄以外には意味不明かも知れない、御示教を祈る」 土曜日には文部省の学術研究会議といふに始めて出席してコムプリートノンセンスを議するが為に午後一時半より九時半頃〔迄〕八時間を消費した。かういふ事を称して活動といふ事が出来れば小生も大に活動しだした訳であります」「新聞全廃の思考実験」と題する一大論文起稿、いづれ御検閲を煩はし度いと思ひます」 今イギリスに居る男と共著の論文をローマ字で書くやうにといふ事で書いてしまつた処がローマ字はいかんといふ説が出て其れに関する文書の往複(ママ)に半年以上を費し、結局英文がいゝといふ事になつて又始めからすつかり書き直して居る。タイプライターで三十枚以上コツ/\とやらなければならない。もと/\英文にしたかつたのだが、かうなつて来ると少しいやになります。」 「物云へど猫は答へぬ寒さ哉」「冰(こお)る夜や顔に寄りくる猫の鬚」などは物になりませんかなあ。