みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正10年(1921)

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[表]
消印午後10時-12時
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町十三
       寺田寅彦


[裏]
其後はしばらく御端書に接せず如何やと存居候、もし御病気ではないかと存居候、」 天気はよくなるし泊客も帰つたものだから土曜日に急に思ひ立つて絵具箱をかゝヘて大宮駅迄汽車で行きました、有名な公園といふので昼飯を食つて、ぶら/\野道を歩いて、甘藷畑の中で一枚写生をした、それから帰らうと思つて停車場へ来ると一時間程待たなければならないので、W.C.の影の柵の上ヘスケツチ函をのつけて一気呵成にブランギン式のを一枚かいた、W.C.へ来た人が見付けて盛に後から立つて見物するがなにしろ熱心がヒドイからそんな事は少しも苦にならなかつた。」
711_01此れに味をしめて又日曜に、今度は浦和迄行つて市外の田圃(たんぼ)をあるき、雑木林の出つ鼻に風呂敷を敷物にして座り込みバタパンを噛じりながら一枚かいた。それから又ぶら/\行つて鉄道線路の脇の崖に腰かけて上のやうなのを大急ぎで描いた、夕日が左の頬に焦げ付くやうであつたが苦にならなかつた。二日のブラ/\で大分疲れました。此れで反応が何ともなければいゝがと存じます。」うちの庭ばかりかくよりは矢張戸外が面白い、殊に今は野山の色彩が実に美しくて全く酔はされます。711_02