みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正10年(1921)

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[表]
消印午後10時-12時
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町十三
       寺田寅彦


[裏]
先日は御端書難有拝見致しました、」犬の風景といふのを読んで見ました、成程面白いと思ひました。あゝいふのは胸の奥の方から出て来たものでしやう。和製メーテルリンクのは大抵あたまのてつぺんあたりから捻り出したやうなものだからそれで物足りない処があるのかしらと思ひました。」文章も物足りないが絵の方は一層物足りないので不相変困つて居ます 昨今一つ表現派のやうなものをやつて見ました。此方は気骨が折れなくていゝが一体何を表現するつもりだか自分に分らないから心細い、」 理想風景を二枚かいて見たが、一組十銭位の絵端書のやうな絵になるので益〻心細い、一体何を苦しんでこんなものばかり描いて居るのかサツパリ分らなくなります。今生の思出に此れ迄の絵を一辺君に見て貰つて、さうして庭上の祭壇で一炬に付して焼いてしまはうかとも考へる。」 露文のツルゲニエフのПервая Любовьといふのを買つて来て訳本と首引でやつて居ます。本場のさしみを食ふやうな気がする