みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正10年(1921)

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[表]
消印22日午前9時-10時
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷区曙町
     十三
       寺田寅彦


[裏]
 御無事御帰京の事と存じます、絵葉書到処より難有う御坐いました。大に羨しい、君も此れで数日来のグルーミーな心持を一洗された事と存じます。」 僕は検便の結果余り良好ならず、其上気候が変に冷涼でそれが妙に頭へ影響してグルーミーになつて困ります。しかし大した事ではありませんから御配慮御無用で御坐います」 昨日松根君来訪大に俳句を論じました。それから是非君に渋柿へ書かせなければいけないといふ事を満場一致で可決しました。僕の説によると小宮君はあまりに書くものに就てゲウィッセンハフトだから少し魔(ママ)痺させ堕落させる必要があると考へます、尤も僕の近来のやうにプロスチヽユーシオンも困るが」 十六世紀はあんまりいじくり廻すとメチヤ/\になりさうで中止しました。其後石川寅治式といふのを一枚やりました。しかしどれもこれもみんな妙に陰気で凄味があつてドロ/\の気味があるさうです。此れは多分青色を使ひ過ぎるせいだらうと思つて居ます。」国へ帰る甥に土産としてスケッチ二枚やつた、それを写真にとつてよこしたのを見ると中〻見違へるやうに立派に見える。尤も写真が少しぼんやりだから猶更よく見えます。