みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正10年(1921)

634_001    634_002
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[表]
消印午前11時-12時
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
    本郷曙町十三
      寺田寅彦


[裏]
いよ/\本物らしい由、困つた事に候、何しろ赤ちやんの乳もある事だし、それに、経過の永い病気だから。しかし早く手当が出来たから御心配な事はあるまいと思ひますがそれにしても矢張り御心労の程御察し申します。充分御自愛を祈ります。」 僕の咽喉は大分よくなりました。それで御見舞に上り度と思ふが取込んで居る処へ坐り込んでのんきな事を談ずるのも如何なものかと思つて居ます。」 メルキユールで「逆様の世界」といふのを読んで居る。飛行家が南半球の洋上で途を失して仙郷へ上陸する。その国は理想的のCommunismが行はれて居て、所謂文明は一切閑却され軽蔑されて居る。Sexの関係も甚だ自由で往来でも家の内の人前でも行はれて居る。大小便なども公〻然と垂れて居る処は奇抜であります。此国は二千年程前に所謂文明が極度に達した為にrevolutionが起つて一切のクルツーアを廃止してエデンの昔に帰つたといふのであります。」御一同様御大事に願ひます