みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正10年(1921)

632_001    632_002
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[表]
消印午後5時-6時
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町十三
      寺田寅彦


[裏]
其後如何ですか、僕は此間の晩一寸出たのが忽ち罰があたつて気管を犯されそれがどうしてもぬけないで閉口して居ます、熱はないからいゝやうなものゝ夜から咳が出てそれに弱つて居ます。かう弱くなつてはレラチビテートも何もダメらしい」 メルキユールで「馬王の怒」といふのをよんで見た、雲南あたりの富豪が御寺へ行つて「馬王」といふ低級なしかし腹の病専問(ママ)の神様に御願をかけて、自分の愛妾の腹痛を治し其代りに老妻を病気にしてくれと頼む、其の為に「馬王」の唇へ阿片を塗りつける。富豪が帰つたあとで藪にかくれて居た悪漢がその阿片をすつかり召し上げて其上に神様を侮辱する。そこで馬王が大に怒つて此の悪漢を呪ひ富豪を祝福する。処が此の神様は恐ろしく頭が悪くて低能だものだから富豪の名と悪漢の名前を間違つてあべこべにしたものだから富豪には禍が下り、悪漢には福徳たちどころに到つて大に成効するといふ筋です」 低能の神様だけは一寸ふるつて居ました     一月十七日