みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

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[表]
消印午後2時-3時
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
      本郷曙町
      十三
       寺田寅彦


[裏]
 二枚つゞきの御葉書難有拝見、御令室御病気の由 御大事に願上候」 昨日久しぶりで外出 丸善へ行つたら独逸書が沢山に来て居た、そして安倍君に逢ひました、三ヶ月ぶりで出て見ると近処の家が門が変つて居たり表札が変つて居たり、日本橋の四つ辻の一角に妙な店が出来て居たりして大に面白かつた」 ニコラス一世がモスコーとペテルブルグ間に鉄道をかけると云ふので地図の上で二都の間に直線を引いた、今のボルシエビキのやり方は丁度此れだとシエストフが云つて居ます。ヘルツエン其外のあらゆる思想家の最も嫌悪したのは「小ブルジョア精神」であるが今度の変動以来此のやうな小ブルジョアの世界が農民の中に設立されたとも云つて居ます」 又一つダヽイスチックな小説に出逢つた、哲学のプロフエツソルが元日に亡妻の墓参に行く途中で一処になつた美人を矢張道づれの兵隊と奪ひ合ふといふやうな筋だが、筋の方はノンセンスで其のダヽリ方が振つたものであります、何の事はない酔つぱらいの管をまいて居るやうなものです、