みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

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[表]
 消印17日午前(?)9時-10時
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷区曙町
      十三番地
       寺田寅彦


[裏]
御手紙難有拝見致しました。能楽を通して見たる神のロゴスも面白いだらうと思ひます、」 何を見ても面白すぎて恐ろしくなつて深入りするのがこわくなつてすぐに狐疑する心が起ると同時に厭になつて来るのが昨今の僕の状態であるらしい。」 此二三日は何とも云へない淋しい落莫たる心地がして居ます。坐敷へさしこむ暖い日光が何とも云へないdrearyなものに感ぜられ空虚なものに感ぜられ自分の病躯が見萎(ママ)らしい干物のやうになつて其空虚の中にぶら下つて居るやうな気がして居ます。あんまり外界との交渉がなさすぎる為だらうと思つて居るがやり切れない」 君の手紙を日向で読んで居てふつと気がつくと状紙の色に応じて墨の色がそれ/゛\ちがつた美しい補色に見えて来た。薄い桃色のが一番著しくて墨はひわ茶色に見えるのでした。」 物理学序説は矢張り序説で物理学でないんだから大丈夫君のエンヂョイせらるべき性質のものですが、さううまく出来るかどうかは分りません。しかし大体系統だけ立てゝ見ましたが事によつたら面白いものになるかも知れないと思ひます