みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

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[表]
消印午後5時-6時
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
     本郷曙町
     十三
       寺田寅彦


[裏]
御手紙と原稿たしかに拝受、御面倒の段拝謝致します。」 風邪はまだ抜けないさうですが大丈夫ですか、こじらせないやうに願ひます。」 小生まだ外出を許されず、夜中に目がさめて考へて居ると実際心細くなつて来ます。自分は一体どうなるのだらうと思つて」 芝苅は御言葉に従つて少しばかり刈込み始めたが、刈り込んで行くと段〻に心細くなるので、唯冗漫な説明文句を少し抹殺する位に止めておきました。文明の芝の所を五行ばかり消し、迷信の種類云〻を消しておきました。」「球根」の方はもう少しねかして置いて少し直して見やうかと思つて居ます。」 「厄年」の方はしまつて置いて「芝刈」を中央公論の正月号へやりましやう。」 何をしても飽き易いと見えて、もう少し漫筆は飽きかけました。今度は「物理学序説」と称する本をかいて見やうかと思つて居ます。物理学教科書の第一頁にあるやうな事を少し立ち入つて論じて見たいと思つて居ますが、それも又ぢきに厭になるかも知れません。漫筆も種はあるから其内に又何か見て頂くかも知れません。小説も頭の中にはあるが今は少し工合が悪るい。
 御大事に。其内よくなつたら又一度来てくれませんか