みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

612_001    612_002
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[表]
消印不明
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
    本郷曙町
     十三
      寺田寅彦


[裏]
拝啓、扨て又妙なものを書きました。此れは小説と名づけるつもりですが、さういふ名は無理かも知れません。今度のも余り気乗りがしないのを少しづゝぽつり/\書きましたから多分駄目かと思ひますが、兎も角も御暇の時に見て頂いてそして何とか云つて下さるやうに願ひます。」 此間中岩波の哲学叢書を片つぱしから読んで見ました。安倍さんの哲学史も通読して見たがなんだか六かしくてよくは分らなかつた。哲学者といふものは文学者の食つた肉の骨を拾つてそれでいろんな枠を組み立てゝ居るものだといふやうな気もしましたが。しかしやつぱり考へて見るねうちはあると思ひました。一番面白かつたのは希臘の古い自然哲学と最近の物理学とを比較して見て、土台になつて居るエネルゲチツクやアトミスチツクの考方がまるで同じ事でちつとも進歩して居ないと思つた事でした。    十一月九日
風邪はもうよくなりましたか、御大事に