みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

591_001    591_002
画像の拡大
(画像は原文とテキストの並べ重ねができます)
[表]
消印(年不明)29日午前11時-12時
赤坂区青山
南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
   本郷曙町
   十三
     寺田寅彦


[裏]
御端書難有う、病気は其後段〻いゝ方ですが今度は二十日以来殆んど流動食ばかりにして終日寝て居るので元気がなくなつて何をするのも厭で、日記をつける事もおつくうなのでつい御無沙汰しました。唯暗黒なる空気の中に包まれて居るやうな心持であります。メルキユールにStendhalの事を論じたのがある。此人は一面には単純で、自然で、熱があつて、ナイヴであると同時に又一面には複雑で、スレツカラシで、ひねくれて居て、鼻抓(つま)みな人であつたといふので少し読みかけて居ますが此人の作品を知らないから興がのらない。其内に何か捜して読んで見る積りです」 海のポエジーといふのを読んで見たら潜航艇の勇士の最後の光景などがあつた。其中にある仏潜艇が坐洲して居る処をドシ/\砲撃されるのでみんな其の洲へ下りてtrenchを掘らうといふ最中に給仕長が平気で「食事の用意宜しい」と云つて来る処が一寸面白かつた。
中央公論から一三二、だけよこして少〻驚いて居ます。