みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

527_001    527_002
画像の拡大
(画像は原文とテキストの並べ重ねができます)
[表]
消印日付時間不明
赤坂区青山南町六ノ一〇八
 小宮豊隆様
    本郷曙町十三
      寺田寅彦


[裏]
 今日は失礼しました、君の門を出たら急に寒くなつた、所〻泥濘のひどいのをよけて歩いて居たら何だか泣き出したくなつた、空も泣き出しそうに見へた、君のハガキをポストへ入れてそれに対する返事を考へて居たら何時の間にか機嫌がよくなつた、電車通迄出たら車が居たから停車場迄のつた、明るい内に宅へかへりついて風呂に入つて飯をくつたら少し草臥(くたび)れていゝ心持に眠くなつて来ました」 もう少し落着いて居たかつたが寒くなるのと電車の不穏が気になつて妙に落着かれなかつた、」 先生のあの画はよかつた。又少し画がかき度くなつて来た、」 君の室はいつでも整然として居る、僕もそういふ事はすきであり又どうすればいゝかといふ方法は知つて居る積りだが、それを実行するのは面倒で出来ない、ゼームスの説によれば僕は矢張most contemptibleの一人だらうと思つて少し悲観しました。」 今日行きの電車でKartoffel-naseの好標本を見て面白かつたが君に報告するのをツイ忘れて居た、両眼の間とカルトッフェルとの中間に広大な平野のあるのが余程の奇観であつた、あゝいふ標本は生れて始めて見た