みやこ町歴史民俗博物館/WEB博物館「みやこ遺産」

みやこの「ひと(先人の事績)」

寺田寅彦書簡

大正9年(1920)

[月推定]
519_001    519_002
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[表]
赤坂区青山南町
六ノ一〇八
 小宮豊隆様
    本郷曙町十三
     寺田寅彦


[裏]
春日行はまだどうも早すぎます。第一夜は寒くてけんのんだしそれから食ふものゝチョイスが余り自由でない。しかし極暖い日の昼食を風月でやるのならいゝかも知れない、パンもいゝし、スープもいゝし、魚も玉子もそれから肉も柔かいのならいゝし、」 こう書いて居ると何だか食い度くなつて来ました」 アンナカレニナはまだすみません、前に省略版を読んだ時は話の筋だけ読んだ、近頃は少し頭が進歩したのか今度は性格や心理や学説をよんで居る。」 レギン対農民の問題などが大変インテレストを惹起した、露文で読めたらさぞいゝだらう」 ツアラトウストラは其処等の本屋には見当らないやうです、岩波で古本でも捜して貰はうかと思つて居ます」 問題のクロポトの論文をよんで見た、理想は面白いが議論はメチヤ/\だと思つた、魚が鳥の世界を論じて居るのです。こんな議論をするより飛行機をウント発達させれば其方が却て早く彼の目的に達せられる』 絵をかき度いがなんだかおつくうでそれに外は寒いし、内で描くやうな花がないし、まあ当分巨燵(こたつ)で本をよむ外はありません。歌も俳句もとんとやる気がない。そして肝癪は平均二日に一ぺん位づゝ起して居ます      謹言