綾川町立図書館/デジタルアーカイブ

滝宮ばやし読本

滝宮ばやし読本

~ふるさとの歴史と文化に思いをよせて~

 私たちは今、田園都市の恵まれた環境の中で毎日を過ごしています。郷土の今日を営々として築かれてこられた先人達の、歴史と努力の賜と心から感謝しています。
 自分の生まれた町の今は理解しても、自分が生まれる前のこの土地はどんな姿であっただろうか、思えば果てしない思考に落ちていきます。
 幸いにしてふるさと滝宮に深くかかわる人々や歴史・自然を織り込み毎年夏祭りで歌い踊っている「滝宮ばやし」があります。これを繙(ひもと)くことで一層郷土に誇りを持てるのではないかとの気運が公民館運営協議会の委員の中から彷彿(ほうふつ)と沸(わ)き起こり、この度の読本づくりに至りました。
 讃岐の国の郡は、延喜式(えんぎしき)(康保4年、967年より施行)によると阿野郡(あやぐん)他9郡であり、今日の滝宮は阿野南条郡(あやなんじょうぐん)羽床郷滝宮であります。
 名高い鮎滝(あゆたき)については、「鮎滝は琴平電鉄沿線滝宮町天満神社の西方一丁(いっちょう)余にあって本郡(阿野郡)に貫流せる綾川の中流に当たり、西岸は絶壁をなし、川中に大小の奇厳怪石(きがんかいせき)起伏し、其状千差万別を呈し、清流上方より来りて巖石(がんせき)に当たり、急流瑞竜(ずいりゅう)をなし、飛沫縦横(しぶきじゅうおう)をなす。老松古木巌上に樹立(じゅりつ)して影を水上に写す。」(梶原竹軒編「古今讃岐名勝図絵」昭和53年発行、綾南町誌より)と記されています。
 菅公さんは任期中153首の詩を詠まれたと言われていますが、その中の一首を紹介します。
     亞水花  水に亞(た)るる花  (菅家文草(かんけぶそう) 287)
    花は巖の辺に發(ひら)きて   半ばは流れに入る   紅匂い緑淥(きよ)くして
    両(ふた)つながら悠々(ゆうゆう)たり   日は速き瀬を焼きて   竜脳(りゅうのう)を熏(ふす)ぶ   (略)
【訳】山桜の花が綾川の渓谷に開き、川の流れの中に枝を垂れている、紅の桜の花の匂いはたっぷりとかおり、緑をたたえた清らかな水が豊かに流れる、春の日の光は流れの速い浅瀬を照らし、花の香りに竜脳香(りゅうのうこう)をたきくゆらせるように桜花が匂う。
【語訳】竜脳香は竜脳樹(りゅうのうじゅ)(マレーシア原産)の樹液の結晶。樟脳(しょうのう)の香りがして、古くから香料として用いられています。
【解説】菅公は「私とともにこの好風景を見て、春ののどかな気分にひたる者は誰ひとりいない。」と単身赴任の旅愁を詠んだものと思われます。
 このように綾川についてみるだけでもいろいろな過去が想像でき、歴史に思いを馳(は)せることができます。
 滝宮公民館運営協議会において選任された委員が相集い、平成25年5月に着手し、回を重ね今回発刊の運びとなりました。
 委員の皆様また編集の中核となられた編集委員、そして資料収集にご協力を賜った多くの皆様に深甚なる謝意を表し、厚くお礼申し上げます。
 歴史に思いを馳せる、その一片にでもなればと念じつつ
 
   平成26年3月30日
               綾川町教育委員会 教育長 杉村 和則