河本家住宅保存会・手錢記念館・島根大学附属図書館/山陰地域史資料アーカイブ

出雲文化活用プロジェクト報告書2014

出雲文化活用プロジェクト2014

手銭家歴代の和歌活動―歌壇史上の意義を中心に― 久保田啓一(広島大学大学院文学研究科教授)

 手銭家の和歌のもう一つの頂点、即ち有鞆とさの子の和歌は、俳諧の点取の形式を導入してさらに俳諧と近づいてゆくことになるが、紙幅の都合で言及できなかった。別稿で改めて論じる所存である。
 
  注
 (1) 以下、手銭記念館所蔵の資料を引用する際には、整理番号を括弧に入れて付記することとする。
 (2) 資料の引用にあたっては、通行の字体に改め、適宜句読点・濁点・括弧などを補う。
 (3) 季硯や冠李、百羅の俳諧活動、及びこれまでの研究状況については、伊藤善隆氏「季硯句集『松葉日記』―手銭記念館所蔵俳諧資料(一)―」(『山陰研究』六、二〇一三年一二月)、同「翻刻・手銭記念館所蔵俳諧伝書(一)―手銭記念館所蔵俳諧資料(二)―」(『湘北紀要』三五号、二〇一四年三月)、及び同氏の講演「俳諧史の中の出雲・大社・手銭家」(二〇一四年一二月一三日、於 手銭記念館)の配布資料に詳しい。
 (4) 「膳」は字形に疑問があるが、このように推読しておく。
 (5) 釣月と常悦の師弟関係については、蒲生倫子氏「江戸時代の松江藩における「歌道伝授」の研究」(『島大国文』二五号、一九九七年二月)、芦田耕一氏『江戸時代の出雲歌壇』(今井出版、二〇一二年三月)第二章「江戸時代前、中期の出雲歌壇」に詳しい。
 (6) ただし、雑の部の見出しには「雑拾首」とあり、「五」の字を脱する。
 (7) 同資料については、中澤伸弘氏『徳川時代後期出雲歌壇と国学』(錦正社、二〇〇七年)、注(5)所掲芦田氏著に触れるところがある。
 (8) 二〇一四年一二月一四日に開催された「手銭家蔵書から見る出雲の文芸」シンポジウムの田中則雄氏の基調講演「手銭家蔵書と出雲の文芸活動」において言及された。
 (9) 注(7)所掲中澤氏著所収「資料『類題八雲集』作者姓名録」は、『類題八雲集』の作者姓名が五十音順に配列され、在所と通称・官職などが付記された一覧表である(同書一〇三~一一三頁)。登載された杵築の歌人の中から同姓の人物を検索して遡ってゆけば、「高角社奉納百首和歌」の作者に辿り着くと思われる。人物の同定は今後の課題としたい。
(10) 恐らく、「延文百首」二六〇九・為明の「棹姫の手ぞめの糸をくり出でて梢にかくる春のあをやぎ」(題「柳」。引用は『新編国歌大観』第四巻に拠る)あたりが念頭にあろう。
 
 〔付記〕
   本稿は、手銭記念館特別企画展「江戸力 手銭家蔵書から見る出雲の文芸」の連続講座「手銭家歴代の和歌活動―歌壇史上の意義を中心に―」(二〇一四年一〇月一三日)の講演内容に、シンポジウム「手銭家蔵書から見る出雲の文芸」(同一二月一四日)における発言内容を一部組み入れて著した。調査研究に際してさまざまな便宜を図って下さった現御当主の手銭白三郎氏・裕子氏御夫妻、資料に関して御教示を得た手銭記念館学芸員佐々木杏里氏に、心よりお礼申し上げたい。
   なお、本稿は国文学研究資料館基幹研究「近世における蔵書形成と文芸享受」(代表 国文学研究資料館大高洋司教授)の研究成果であり、平成二六年度科学研究費補助金基盤研究(C)「成島家を中心とする近世中後期幕臣文化圏の研究」(代表 久保田啓一)による研究成果の一部である。
 
 
 
プロフィール◆
くぼた・けいいち 一九五九(昭和三十四)年十月十三日、福岡県大牟田市生まれ。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。有明工業高等専門学校助手、同講師、梅光女学院大学文学部講師、同助教授、広島大学文学部助教授を経て現職。専門は近世文学、特に冷泉家とその一門を中心とした近世和歌研究、江戸幕臣文化圏研究など。主著 『新編日本古典文学全集73 近世和歌集』(小学館、二〇〇二年)『近世冷泉派歌壇の研究』(翰林書房、二〇〇三年)『新日本古典文学大系明治編4 和歌俳句歌謡音曲集』(共著)(岩波書店、二〇〇三年)『歌論歌学集成 第十六巻』(共著 三弥井書店、二〇〇四年)『和歌文学大系74 布留散はちすの露 草径集 志濃夫廼舎歌集』(共著 明治書院、二〇〇七年)など。