五條市教育委員会/中家文書調査報告書

中家文書調査報告書

第三章 解説

第七節 御用留から窺える地域社会

 〔箱1-49〕の天保一二年(一八四一)七月二九日の項に記載されている。
 当時五九歳の五條村清兵衛後家とくは、百姓の作間に古手古道具の売買を渡世としていた。同月の一九日に、名前を知らない者から「鮎漁之小高網壱抱」を買ってくれと要望されたので代料銭一貫文で買った。その後同月二五日になって「名前不存通り掛り之商人」へ銭一貫五〇文で売却した。ところが、「無宿熊治郎盗候品」であるという件で取り調べが行われる始末となった。庄屋源兵衛とともに清兵衛後家とくが「御憐愍之程」を五條代官へ願い上げた文書が書き留められたのである。「鮎漁之小高網」が具体的にどのような網か不詳であるが、吉野川沿いの五條村の古手古道具屋に持ち込まれうる品ではある。この事案は、五條地域の代表的な家業であって百姓仕事の作間渡世ともなっている三商売の営みの具体相をよく示している(勿論、とくが本当に「名前不存」かどうかは怪しい)。他方、盗品を売買したことから、審理が終わるまで庄屋の監督責任による「村御預ヶ」の処置が採られたが、その後の処置は不明である。