五條市教育委員会/中家文書調査報告書

中家文書調査報告書

第三章 解説

第六節 吉野材木方口役銀と代官所

 前述のように、仕法替え以後においても、川上・黒滝両郷は他の郷に対して特別な扱いであった。文書群においても、当然それが反映されている。川上郷・黒滝郷への幕府の助成が変更された主要点は二つある。「定式被下置」銀と一歩七厘銀である。まず前者について。
 前述のように川上郷には「惣代御手当」などが毎年一二月初旬に捻出されていたが、これとは別に「当子年口役銀之内」からという名目で相当額が毎年計上されている。ここでも一覧表を提示しておきたい。川上郷二三ヶ村の場合、一七ヶ村と六ヶ村分に分けて子年~辰年の期間中毎年定額が計上されていて、両者合わせて二三ヶ村、全体では合計一五、五〇〇匁となる。黒滝郷でも同額の一五、五〇〇匁が打ち出されており、文書〔50・121・160・215・252〕などでそれが知られる。川上・黒滝両郷の合計は銀三一貫目である。この両郷には、この定式額以外にも文書〔2・13〕などのように「口役銀之内」を以って相応の銀額が計上されている。
 次に一歩七厘銀についてであるが、ここでも文化一三年(一八一六)に当たる子年分だけの一覧表【文化一三年川上・黒滝郷一歩七厘銀一覧】を掲げて例示しておく。子年分の川上郷二三ヶ村の合計額は黒滝郷一三ヶ村分と同額であって、一歩七厘銀は両郷で等分された形になっている。丑年分の文書には記載されていないが、卯年分(文書〔123・131〕)で見ると川上郷では一歩七厘銀を「高割之分」と「平等割之分」の二つの細目に区別して計上されている。「高割」・「平等割」の二つの基準が設定されているのは興味深い。勿論川上郷の合計額と黒滝郷一三ヶ村支給額(文書〔189〕)とは等しく、両郷ともに約八、二七五匁となっている。この卯年に該当する文政二年(一八一九)や先の文化一三年(一八一六)などの一歩七厘銀額から、幕府の材木補助金政策や材木生産費の一端を窺うことができる。なお、川上・黒滝両郷の口役惣代経費銀一貫目に関しては上述した通りである。
【川上郷定式銀一覧】
文書番号干支川上郷金額(匁)
11617ヶ村(前貸)11,456.522
1176ヶ村(前貸)4,043.478
16117ヶ村(前貸)11,456.522
6ヶ村(前貸)4,043.478
18017ヶ村11,456.522
1816ヶ村4,043.478
18817ヶ村11,456.522
6ヶ村4,043.478
4117ヶ村11,456.522
6ヶ村4,043.478
備考○川上郷23ヶ村全体では毎年合計15,500匁である。

【文化十三年川上・黒滝郷一歩七厘銀一覧】
文書番号185(丑5/8)69(丑5/8)120(丑5/9)
対象の郷村川上郷17ヶ村川上郷6ヶ村黒滝郷13ヶ紂
対象年去子年分去子年分去子年分
一歩七厘銀5,407.089匁3,392.52匁8,799.609匁
備考○文書番号の横( )は文書日付。 ○川上郷23村の合計額と黒滝郷13村の金額とは等しい。両郷合計金額は17,599.218匁