五條市教育委員会/中家文書調査報告書

中家文書調査報告書

第三章 解説

第三節 伝馬所

第二項 馬借所争論

 五條代官松永善之助宛に作成された済口証文〔箱1-71〕。訴訟方は葛上郡佐味郷南佐味村・東佐味村・神通寺村の村役人や佐味郷惣代、相手方は五條村馬借問屋彦兵衛と掛かり合い村として馬借所運営の主体である五條村・須恵村・新町村の村役人、扱い人として出屋敷村・居伝村・近内村・岡村の村役人の三者による「熟談内済」した結果の証文である。佐味郷の村から大豆を居伝村~近内村~東久留野村~西久留野村~上岡村の道筋を通って上之村九兵衛方まで馬で運んだことに対して、五條村馬借問屋彦兵衛がその荷物を差し押さえ、かつ口銭を支払うよう要求した。佐味郷側は、「近在江諸品売拂候分口銭等差出候儀無之」と主張、これに対して相手方問屋彦兵衛らは寛永・延宝年間の高札、元禄・享保年間の裁許状の判例を根拠として対抗した。扱い人達は、西久留野村までは五條村「不打越方角之地理ニ付口銭」は出す必要が無いが、「西久留野村地内字生屋ヶ峯」を越えると、「五條村を打越候方角之地理」だから口銭は必要であると裁定し、双方が納得した。この扱い人の属する村は葛上郡地域から上之村へ至る道筋にある村であると同時に、岡村庄屋定七は宇智郡惣代でもある。この訴訟は、本街道である伊勢街道や下街道から離れた大和国葛上郡地域~宇智郡近内村~同郡久留野村~五條村間の別の道筋における、五條馬借所の差配地域をめぐる対立であった。勿論、葛上郡佐味郷側から見ての「五條村を打越候方角之地理」とは五條村の馬借所の差配権が及ぶ範囲であり、「不打越方角之地理」とは差配圏外を指している。