五條市教育委員会/中家文書調査報告書

中家文書調査報告書

第三章 解説

第二節 五條村

第六項 絵図

 一方、B〔箱3-338〕の絵図は、五條市指定文化財Aの下絵図と考えられる。絵図を折りたたむとその表紙面に当たる箇所に「五條村麁絵図」との墨書があるのは市指定文化財Aと同様である。このAと、下絵図Bを比較して幾つかの特徴を列記しておく。①Bは屋号と名前が簡略して記されている。例えば上田屋利兵衛→上利、槙野屋仁兵衛→槙仁、木屋長右衛門→木長。②構図・構成などほとんどAとBは変わらないが、一部に相違がある。Bは五條村と接続する隣村須恵村の屋号名が相当程度描かれている。須恵村の様子が僅かでもわかり、貴重である。③Aは新町村の部分には模式的な家屋を画くが屋号名は省いている。Bは屋号名と名前が他の場所同様に簡略化して書かれている。五條村絵図であるため、最終的にはAからは五條村以外は除かれたのであろう。④個別的な違いはいくつも見られるが、二、三だけ例示しておく。例えばAに記されていない屋号名・堂舎名がBに記されている場合である。特に注目を引くのは須恵村に「乾十郎」と書かれた建物があることである。A、Bともに乾十郎と記名された建物はこれ以外には見当たらないことに注目すべきであろう。ただし、北之町には乾十郎の兄原野屋竹次郎宅が記されている。Bには、天誅組の変に加わった井澤宜庵の「井澤貞示」宅が大悲院の北側、東浄寺の西側に描かれてもいる(Aは「沢卓示」)。またBには五條村の高札場はもとより、「戎堂」や「御旅所」も記入されている。逆に、Aには郷蔵の北側に代官所の輪郭が示され、野原村に通ずる街道の吉野川に面した南端の鳥居の横の常夜燈が描かれるが、Bには鳥居はあるが常夜燈はない。常夜燈は渡船場の標章であろう。あるいは、Bには北之町・西口町などの町名が記載されていないなど違いは多い。しかしその分、両者の比較を通して五條町の多くの情報が得られる。