浜松市立中央図書館/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ

浜松市史 五

第四章 国際化の進展と新たな課題

第五節 産業・経済

第三項 加工組立工業から先端産業へ

新産業の創出と創業者支援へ

新産業
 昭和五十九年にテクノポリス指定を受けて、平成四年頃からテクノポリス都田開発区を中心に研究開発型企業の集積が高まってきた。他方、地域経済を支えてきた主力産業である自動車産業は経済のグローバル化の中で再編・淘汰の波にさらされ、曲がり角に来ている。円高不況の長期化に伴い、完成品メーカーのみならず、部品メーカーの海外シフトも起こり、地域の中小企業数も減少し始め、産業の空洞化が懸念されている。今後の地域経済を支える新規産業の創出、高付加価値型企業の育成、地域産業の先端産業化が急務になってきた。
 しかし、先端産業(技術・知識集約型産業)の集積度を高めていく上で、地方の工業都市にとって幾つかの壁が存在する。第一に、先端産業は技術革新のテンポが極めて速いため、量産化と研究開発競争を同時に進めなければならないという特徴を持っている。第二に、研究開発投資額が量的に大きいだけでなく、電子工学・物理・化学・数学・機械工学・光学・システム技術などの広範な領域の科学的知見が必要になる。第三に、高価な設備投資を必要とするため、その負担が大きい。第四に、マンパワーに依存する特徴がある。これらの特徴を持った先端産業を育成していくためには先端産業を創出する支援体制の確立が必要になる。
 地域産業の先端産業化の支援体制として設けられたのが、浜松地域テクノポリス推進機構静岡大学地域共同研究センター、静岡県浜松工業技術センター、浜名湖国際頭脳センターなどの支援・研究機関である。さらに、浜松地域テクノポリス都田開発区には、単独企業の進出だけでなく、異業種や同業種の企業が交流して研究開発や人材教育を行う目的で協同組合や研究機関が設立された。それが電線総合技術センター、テクノサーチ都田テクノパークである。それぞれの組織の概要は以下の通りである。
 
浜松地域テクノポリス推進機構
(1)浜松地域テクノポリス推進機構 同機構の前身にあたるローカル技術開発協会は産・学・官一体となって地域産業の新しい技術研究開発の拠点をつくるという目的で昭和五十六年三月に設立された。昭和五十八年になると、同協会は浜松地域テクノポリス計画の推進機構としても位置付けられた。さらに、昭和五十八年に新技術の開発研究を目的に設立された電子化機械技術研究所を平成三年四月に統合して財団法人浜松地域テクノポリス推進機構と名称を変更して再スタートした。同機構は、浜松地域テクノポリスの完成を間近に控えて、ソフト事業を中心に地域産業の高度化を推進していくことになった。地域の産業構造そのものを先端産業化する上での旗振り役である。
 
静岡大学地域共同研究センター】
(2)静岡大学地域共同研究センター 産学交流の拠点として平成三年四月に工学部内に設立され、その後同五年十月に都田開発区内に開設した。静岡大学地域共同研究センターは①民間機関等との共同研究、②民間機関等の技術者に対する高度技術の教育・研修、③民間機関等に対する研究開発などの技術相談などを主な業務にしている。研究分野としては電子、光、電子機械、新素材、ソフトウェア技術開発など主として工学分野を軸に置いている。静岡大学工学部は、もともと浜松における工業発展のインキュベータ(起業を支援する制度、仕組み、組織など)の役割を担ってきた。地域産業の先端産業への転換においても重要な役割を担う機関として、地域から期待されている。
 
静岡県浜松工業技術センター】
(3)静岡県浜松工業技術センター 静岡県浜松繊維工業試験場と静岡県機械技術指導所を統合して平成三年四月に都田開発区内につくられた県の試験研究機関である。同センターは従来の繊維と機械・金属部門に、光・電子部門を加えて地場産業の高度化・先端産業化を支援することになった。地域にある様々な産業での先端技術の活用や熟練した技能が先端技術でどうカバー出来るのかなどの研究や技術指導、相談、技術情報の提供などを行っている。
 
電線総合技術センター】
電線総合技術センター 同センターは電線・ケーブルメーカーで組織している社団法人で、古河電気工業、住友電気工業、藤倉電線、日立電線、矢崎電線など三十七社によって平成三年に設立された研究開発機関である。この研究所は同四年五月に都田開発区内に開設され、電線・ケーブルに関する調査・研究および開発、人材育成、海外研修生の受け入れ、試験・検査、情報の収集などを行っている。
 
テクノサーチ
テクノサーチ 知識融合開発事業を目指す県内外の企業五社の異業種グループが平成二年三月に組織した協同組合である。この異業種グループはセラミックスの小型加工機の開発を目指し、融合化法(異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法)の適用を受けた組合である。メンバーには加工機械の設計・加工のノウハウを持っているアルプスエンジニアリング(本社・浜松市)、燃焼機器・設備メーカーの正英バンズ(本社・浜松市)、電子制御装置のプラス電機製作所(本社・浜松市)、生産自動化のコンサルタントを行う新興技術研究所(本社・東京都)などで、組合の目的は多機種、多品種の生産ラインにおけるトータルな省人化システムの開発と市場化であった。
 
都田テクノパーク
都田テクノパーク 都田テクノパークは平成二年に結成された協同組合である。同組合は中小企業十二社で異業種交流によって新産業興しを目的に結成された。平成五年二月に電気機械器具、プラスチック製品、鋼材加工などの企業(県内六社・県外五社)が工場団地と組合会館を都田開発区内に完成させた。同組合のコンセプトは「遠州の新たなる産業興しに挑戦する技術集団」で、異業種交流による情報交換を主な目的にした。
 
 さらに、平成十二年には浜松地域(浜松市・浜北市・天竜市・細江町引佐町)を高度技術産業集積地域とする活性化計画が、国の新事業創出促進法に基づいて認められた。同計画は目標年次を平成十七年とし、浜松地域の高度技術産業集積の維持、強化による新たな事業の創出を促進していくものとしていた。そのために①産業支援機関間の連携・強化を図る、②地域企業の競争力の向上と新規事業分野への展開を促進する、③大学・研究機関などの研究開発機能の充実・強化を図る、④静岡県新事業創出支援体制(プラットフォーム)を中心に起業のための技術面、資金面、経営面を含む総合的な支援を行う、⑤地域企業のマーケティング力やデザイン力を強化するために支援するなどの施策を講じることになった。また、新たな事業の創出を図る分野として、①新製造技術関連分野(超精密加工技術や光技術など)、②環境・リサイクル関連分野、③医療・福祉・健康関連分野、④情報通信関連分野、⑤その他の分野としてバイオテクノロジー関連分野、防災・安全・生活文化関連分野等を挙げている。
 新産業創出の担い手として期待されるのは中小企業であるが、中小企業の創業支援で大切なことは、第一に、独自の技術や製品を開発して新しい市場を創造する企業を支援することである。第二に、独創的な製品や技術を開発していないが、生産工程に小さな改善や小さなイノベーションを実現し、生産性を高めている企業への支援が重要である。特に、明治以降、時代の変化に適応しながら発展してきた浜松の地域産業にとって後者への支援策が重要である。