NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■岐蘇林友 廿周年記念號(第百四十四號) [翻刻・ルビ・注記] 

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          飯 沼 生(注15)
本県に於ては林政上の基礎を知らむがため、林業の基本的実状調査の必要を感じ、大正6年度より之れが調査に着手せり。調査事項及調査方針を記せば次の如し。而(しか)して調査に当りては1町村を単位として各項目(別記)に就き調査するを便とす。今全県下の町村を通覧するに220町村の内尚も山林のあるものは212町村にして、更に台帳面積100町歩を限り、1町村夫れ以上の山林面積を有するものは164ヶ町村なりとす。本調査は苟(いやしく)も山林を有する町村に就き悉(ことごと)く施行すべくして、又之をなすに若(し)かずと雖(いえど)も之か完成を可及的(かきゅうてき:できるだけ)速かならしのむとせば、其の煩わずらい)に堪へざるを以て先づ百町歩以上を有する町村につき施行するものとし、就中(なかんずく)山林面積豊富なる町村の経済上林業を重しとする町村に主力を注ぐべきものとす。固(もと)より調査項目中林産物消費状況・移出入状況等の調査は、山林面積の有無に関せず施行すべくして前に除分したるものなり。
  林野基本調査項目
(1)総論
  1、位置 地勢
  2、林野 面積
   イ、陸地測量部調製5万分の1地図より各村別全面積を算出し、次に統計又は推定により田畑、宅地、池沼、道路、河川等の面積を算定して之を全面積より控除して林野面積となすこと。
   ロ、公簿により各所有別(国有、県有、郡有、町村有、字有、社寺有、其他の団体有及び私有)林野面積を算定すること。
    右の内私有に対しては本村人の所有面積、他町村人の所有面積に区別すること
     備考、本項の調査を基礎とし実地の踏査を経たる後、推定により本項公簿上の面積を訂正し実測のものとなし、(イ)により得たる1町村内山林面積の内訳を作るものとす。尚実地に就き立木地・無立木地の割合をも定めたる
 
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後、森林面積簿を作製すること。
(2)地況
 地勢、地質、土性を各大字(おおあざ)毎に大要説述すること、而して之等の記述を明にする為其土地の代表的適樹を指定すること。
(3)林況
 陸地測量部作製5万分の1地図に林相(りんそう:注16)を記入すること、而して林相の色別は
  1、赤松と外の針葉樹と雑木林と混交林
  2、赤松雑木混交林
  3、樅(もみ)赤松混交林
  4、雑木林
  5、赤松林
  6、黒松林
  7、松・扁柏(ヒノキ)・花柏(サワラ)・?(羅漢柏、アスナロ)・樅(モミ)林
  8、竹林
  9、薙畑(なぎはた:焼畑)
  10、無立木地
  の10種とす
(4)林木蓄積
 前項の林種別により齢級別に面積を推定し、次に之に依り其蓄積を算定すること。但し此場合人工林にありては予(あらかじ)め区長をして其区内、森林所有者に別表(人工造林調査表)を配布して樹種及樹齡・現在立木本数計を調査せしめ置き、之を基礎として面積及蓄積を算定し、雑木林にありては実地を踏査して齢級別面積を推定し、夫々標準地伐採棚積したる上、全林の面積を計算すること
 尚桐、欅(けやき)、栗其他濶葉樹(かつようじゅ:広葉樹)にして用材を目的とするもの及漆樹・油桐(あぶらぎり)にありては区長をして之が直径別に本数調査を提出せしむること。
(5)地方林業の長所と欠点及之が将来に関する意見
(6)林産物及林産工芸に関する調査
  1、其の起原沿革
  2、生産方法
  3、産額(数量「資材の数量及原産地を附記すること」)
  4、販路
  5、運搬の方法及運賃
  6.生産、販売、運搬等改善に関する意見
   但し1及2は林産物工芸に於てのみ記述するものとす
  7、林産物移入数量払額及原産地
  8、林産物消費の状況
   需要額は町村内日用の木竹薪炭と工業用のものを別々に調査すること
  9、林産物移出数量払額及移出先
 
  (改頁)
 
(7)木竹材及薪材の需給関係
 前項蓄積生産及消費の状況により、現在に於ける相互の関係及将来の見込を記載すること
(8)苗木生産需要の状況
  1、生産の数量
  2、販売購入の数量
  3、苗木生産需要に関する将来の意見
(9)森林の災害
  1、災害の性状
  2、駆除予防及取締方法
(10)参考事項
  1、放牧・除草・刈萱(かりかや)、薙畑、森林組合・産業組合等の現況・其他参考となるべき事項を調査し、之が将来に関する意見をも記載すること
(11)林業上指導奨励すべき事項
 以上の調査に甚だしき村に於て林業上指導奨励すべき事項を列記すること
   将 来 の 方 針
1、第1回(台帳面積百町歩以上)調査修了後は引続き林野台帳面積百町歩以下を有する町村に対し、林野の地況・林況・並要造林地・要林種改良地・林産物の需給関係等を調査し将来の施業確立するものとす。
2、本調査の結果、未立木地及林種改良を必要とする土地に対し、造林をなす者に県費を以つて相当補助をなし、造林の速成を期すると共に又一面当業者の希望に応じ技術者を派遣し、測量及施業計画案編成並適地の選定実地指導等をなすべきものとす。
3、其の他本調査の結果に基き、本県林業施後を根本的に確立すべきものとす