NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■岐蘇林友 廿周年記念號(第百四十四號) [翻刻・ルビ・注記] 

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          脇 田 山 の 人
木曽御料の伐木運材は大古式のホイホイでは余りに旧型に属する者がある。過去及現在の如き労働資金の安価な時代は可なんも、将来は斯くの如き安価にて底止するものに止らず、必ずや高騰を来すは明らかなり。故に今より当局の一考を要するのである。山の人は別に新しがるではないが、現に北米などの話を聞くも如何に彼の地の器械力の応用発達せるかに一驚するのである。比較的御料は進止(しんし:思うように支配すること)したつもりか知らないが、マッチ箱式の軽便鉄道や10―15封度(ポンド)の軌道で10万町歩の貴重な用材を搬出する時代遅れは寒心に絶へない。夫(そ)れのみならず中央線の各駅に運搬された用材が再び積換へて輸送するが如き呑気さと来たら話にもならぬ。同じ軌道を布設するなら五十歩百歩だ。中央線と同一の軌動を奮発してほしい。シミタレ夕経営は時代に順応せざるのみならず、むしろ逆行の感がある故に中央線と同一軌道なれば各駅で一々積換の世話は絶無で、夫れに用せし諸
 
  (改頁)
 
経費を節約し、伐木所迄を連絡して置けば、短期間にして市場に目的とする用材を敏活に運搬が出来、消費者側も便宜を得、供給者の立場も利益を増大し、而(しかも)文明的で今日廃棄せられし樹種は何等の苦痛もなく利用せらるゝに至り、始めて世界的歩調をとる事が出来る。尚伐木方法にしても手斧や鋸で数千人の労役に依らず、器械力を応用しなければ現在の杣(そま:きこり)を有効に活動せしむると信ずる。然して木曽の天地を順次開発せられしならば真に名実共に完備するので好模範を造る事になり、引いては中央山林国の開発ともなる。此際当局の主脳者に望む。徒(いたず)らに机上の論議を離れ欧米を視察して着々其長所を含味し応用せられ、御料林の益々健全なる発達を期せられん事を希望して止まざる次第なり。