NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■岐蘇林友 第十九號 [翻刻・ルビ・注記] 

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林業年中行事(続)

  六  月
内 業
  前月に同じ。
苗 圃
1、除草を怠るべからず。殊に播種床に於て然(しか)りとす。元来苗圃手入の要は断えず循環除草を行ひ、草類をして発生するの暇なからしむるに在り。故に俗に常に草を追ひ決して草に追はるゝ勿(なか)れと云へり。斯(か)くせば其結果は却て費用少くして苗木の生長良好なるものなり。
2、可成(なるべく)曇天降雨前又は細雨の日を選み施肥をなすべし。
3、梅雨中は苗木の成育上、日除けを取払ひ置くを得策とす。然(しか)らざれば陽光不足の為(た)め苗木過長薄弱となることあり。
4、常緑濶葉樹(かつようじゅ:広葉樹)並針葉樹類の挿木をなすべし。
造 林
1、造林地の下刈を始むべし。即ち渓間其他、荊棘(けいきょく:いばら)雑草の繁茂甚しき所より順次着手し、夏季中2回下刈を要すべき箇所に於ては可成本月中に第1回刈を終るべし。而(しか)して下刈の目的は力(つと)めて低く荊棘雑草を刈り払ひて苗木の被圧を防ぎ、之れを地面に撒布し置き其儘(そのまま)腐朽せしめて苗木の肥料となすにあり。
2、竹類は本月に至りて筍の生長して〓(1字印刷不明)を剥離し枝を出したる頃(即ち入梅中)を以て移植の好季節とす(古来竹の移植は旧5月13日を以て最良日となせり)。即ち1、2年生の竹幹を可成大株に堀り取り、枝4、5階を残して幹梢を切り去り以て移植するに在り。古諺(こげん:昔のことわざ)に云一人
 
  (改頁)
 
持の竹株は10年にして繁り10年持の竹株は1年にして繁ると。
3、目黒附近の江南林に於ては新竹の下枝2階位の〓(1字印刷不明)剥離したるを俟(ま)ち、幹を振動して其11、2節より上部を折り根の発育を完全ならしむ。
4、江南竹・苦竹(にがたけ)・淡竹(はちく)の類(注23)は其林内の新竹に一々年度を記入し置くべし。左(さ)すれば伐採の節、頗(すこぶ)る便利を得るものなり。
保 護
1、梅雨に際し苗圃及林道溝渠の排水に注意すべし。
2、出水の為め道路破損し堤防決潰することあり。可成速に修繕すべし。
3、松毛虫、本月より7月迄葉間又は樹皮の割れ目等に結繭するにより之を圧殺すべし。
4、落葉松(カラマツ)、葉蜂(ハバチ)現出す。注意すべし。
5、櫟(クヌギ)、毛虫は本月巣網を作りて群棲するにより、其散せざるに先だち之を騙除すべし。
6、櫟、毛虫蛹化(ようか:幼虫がさなぎになること)するが故に、其結繭を圧殺すべし。
利 用
1、皮付の儘(まま)造材したる杉丸太は入梅の候に於て虫害を受くること多し。注意を要す。
2、引続き運材をなすべきも農繁時にして灌漑の必要上、谷川を堰き止むる地方に於ては木材の川流をなすことを得ず。
3、北陸地方に於ては本月上旬より10月上旬まで漆の返掻(注24)をなす。東北地方に於ては半夏生(はんげしょう)頃、即ち7月上旬より秋の彼岸、即ち9月下旬まで返漆(注25)を採集す。
4、秋田地方に於ては食用として根曲竹(ねまがりだけ)の筍(注26)を採収す。

1、日本海に注ぐ水流に於ては、本月末日迄(まで)小鮎の漁獲を禁止せり。
2、雁類は北地に於て本月頃産卵す。