NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■岐蘇林友 第十九號 [翻刻・ルビ・注記] 

            画像3
          小 羽 根 
40年後に於ける我校演習林が林価算法上如何なる利益を得るやを御紹介申さん。
我校演習林面積は約100町歩なるが、此中林道・岩石地・沼沢地等のために実際造林面積は80町歩として算すべし。而して現今我国の利率は4、5分なれども今茲(ここ)には年3分の利率を有する資本を以(もっ)て演習林を経営せむとす。我校にては毎年2町歩づゝの造林をなす故に、80町歩の面積には40年後に於いて全部植付を終るものとす。樹種は一部分落葉松(カラマツ)等を植付けたれども大部分は檜(ヒノキ)なり。費用は地拵費として1町歩につき50円を要す。是(こ)れ此地多く立木ありて加ふるに岩石地なれば、刈り払ひ取りかたつけ等に多くの労力と多くの時日とを要すればなり。
苗木代は例年の価格にて3厘5毛(注16)位となし、1町6,000本を植栽するものとす。其他の苗木は補植のもの不良のもの等にて先苗不購入費を金30円(苗木補植の植苗其植付費とも)、植付費は普通にて1人1日400本を植栽すとせば、1町歩に15日を要す。而して1日の賃金を仮に40銭とせば、植付費にては6円を要すべし。以上費用を改めて明かに掲ぐれば次の如し。
  地拵費   50円
  苗木代   30円(造林補植等含)
  植付費    6円
  合計    86円
而して此86円は1町歩の造林費なるにより毎年2町歩を造林すれば、此2倍即ち172円を40年間毎年出すものなり。
40年後に於ける費用総額は複利算を要するを以て、有限連年収入の前価式によりて左の如く求め得べし。

[式]

即ち12,968円80銭の経費を要するなり。
而して檜1尺〆(しゃくじめ:注17)の40年後の値を4円とす。又年々生長する量は1町歩に付き25尺と仮定すれば、40年後に於ける材積総量は等差級数の式によりて左に算出せらる。

[式]

即ち41,000尺〆を得べし。是(こ)れに1尺〆価格4円を乗ずる時は総収入164,000円を収むべし。
然(しか)れども演習林地は全部福島町の所有なり。故に収入を得たる時は其収入の2分の1を福島町に出すべき約束なるにより、我校の収入は82,000円なり。而して前費用12,968円80銭を差引く時は、我校の純収入69,031円20銭を得べし。
付 林地に対する租税は福島町に於いて収むるを以て我校に関係なし。
40年後に於ける利益、既にかくの如し。故に以上記せし所にて林業が如何に利益多き事業なるかを知り得べし。故に80年乃至(ないし)100年後、又は是れを法正林(ほうせいりん:注18)とせば、実際上我校演習林の価値実に多大なるものたるを信ず。
次号には杉と『くぬぎ』と林価算法上何(いず)れが利益多き樹種なるかを記さんと欲す。