NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■木曾山林学校々友會報 第一號 [翻刻・ルビ・注記] 

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本試験苗圃は当校の西北なる半町以内にありて、此地は元桑畑であつたを本年2月造林試験苗圃となした。面積1反2畝歩ありて、方位東南は開放して西北の2面は森林を負たる平坦の地である。土質は壌土(じょうど:注28)に近くて苗圃の形状は殆んど正方形に似て居る。而して内部の区画を220区画として、其各の区画面積4分の1秤(3尺平方:注29)。土壌・種子大小比較試験及び外国産の分は16分の1坪(1尺5寸(:注30)平方)。普通播種試験の分は2分の1坪(6尺・3尺)の箱画を埋め造り、試験種目は第10に分ち、樹種は扁柏(ヒノキ)・杉(スギ)・落葉松(カラマツ)・花柏(サワラ)の4種と外国樹種にて、其他の樹種は普通播種試験とす。各区画間の距離は東西6寸、南北2尺に並行して、東西に通行するに便利にしてある。
播種前床内の耕したる土を深さ1尺位を目の1分(いちぶ:1寸の10分の1。約3mm)位なる鉄篩(ふるい)を以て細土を卸し、板片にて其床面を能(よ)く圧し付け、平均して肥料(肥料試験は除く)1坪の割り、人糞2升(しょう:1升はやく1.8リットル)と人尿2升とに水を加へ能く攪(か)き迴して床面にかけ、然る後種子を散播とし、其上に歩道の土を前の篩で通常1分の厚さに覆ひて、其上に先づ中央に縄を強く引き張り、之れに藁(わら)を1本並べに敷いて、尚(なお)其上に縄を引き之れを串にて抑へ置くのである。此の藁を並べ置くは土地の乾燥を防ぎ、又風や雨の害及び鳥などの害を予防するの目的である。其外樹種、産地、播種月日、発芽日、等の事柄は以下試験表に掲げてある通りである。発芽後は藁を除き取りて直ぐに日除(ひよけ)を以(もっ)て光線の直射するのを遮り、床面の乾燥するのを防ぐのである。日覆(ひおおい)は杭木を苗木の四隅に立て竹を横たえて結び、其上に葭簀(よしず)を並べ置く。日除の高さは1尺5寸位にて南方は北方より5寸位低くしてある。凡(すべ)て日覆は大雨の外、朝覆ひ夕に除く都合なり。旱魃(かんばつ)の時は灌水器を用ひて朝夕水を灌(そそ)ぎ、亦時々除草をなしつヽある。以上の仕事は演習であるからして2学年生徒が一切の学力に当て各区受持を定めて居ます。
    目  次
  第1表  播種期試験
 
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  第2表  播種量試験
  第3表  被土試験
  第4表  日覆試験
  第5表  産地比較試験
  第6表  浸水試験
  第7表  防寒試験
  第8表  同価肥料試験
  第9表  土壌試験
  第10表  種子大小比較試験
  附    普通播種試験表
 
第1表  播種期試験
本試験の目的は、播種季節を異にすれば発芽の遅いとか速いとか、又発育の状況に如何なる差異があるか、又それに依(よ)つて播種の季節は何時頃が適当であるかを試みるのである。蒔付(まきつけ)は3月より8月迄6ヶ月の間、毎月10日20日30日頃に於て播種を試みる(播種量は1坪に2合(ごう:注31)の割合)。
(注 「第1表  播種期試験」の表は原本ビューワ20コマ参照)
 
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第2表  播種量試験
本試験は、播種量の多少は苗木の成育上に如何なる関係があるかを試験するものである。其方法はすぎ・ひのきの如(ごと)き小粒の種子は1坪に付き5勺(しゃく:注32)乃至(ないし)5合までの各種に播種したり。則ち次ぎの表に掲げる様にしたものである。
(注 「第2表  播種量試験」の表は原本ビューワ20コマを参照)
 
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第3表 被土試験
本試験は被土の種類及其厚薄によりて、発芽の遅速及び苗木の生育上に如何なる影響を及ぼすか試験するのである。其種類は被土1分乃至4分とし、苗木の優劣を判定する目的である。
(注 「第3表  「被土試験」の表は原本ビューワ21コマ参照)
 
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第4表 日覆試験
本試験は無陰、疎陰、中陰、密陰の4種に別けて被陰の有無と其厚薄とは苗木の生育上に及ぼす所の状態を試験して、適当の被陰物の種類を定めるが目的である。該日覆物は疎陰の方は一本編みの簀(す:よしずの略)を一重、中陰の方は二重、密陰の方は三重として架上に布(し)き並べ、細雨の時或は曇天の時には之れを除き去るものである。
(注 「第4表  「日覆試験」の表は原本ビューワ22コマ参照)
 
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第5表 産地比較試験
本試験の目的は各地に産する種子を播種して、発芽の遅速及び苗木の成長上を試験するのである(尤も其内、外国産の樹種は16分の1坪づゝに播種し、肥料は大豆粕を施したである)。
(注 「第5表  「産地比較試験」の表は原本ビューワ22~23コマ参照)
 
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 備考 播種量は未定にして播種後未(いま)だ日ならず、
    発芽等は記すことできず。
第6表 浸水試験
本試験は各種子を普通冷水に12時間乃至4昼夜浸し、之れを取り上げ日陰にて乾かして播種したもの。発茅の遅き速きは苗木の成育上に如何なる関係を及ぼすかを試みるのである。
(注 「第6表  「浸水試験」の表は原本ビューワ23コマ参照)
 
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第7表 防寒試驗
本試験の目的は霜・雪・寒風が苗木に対する害を及ぼすのを防ぐ為(た)めに、其設備をして苗木の生育上に如何なる影響を来たすかを試験するのである。其種類は堀取・藁覆・防風雪設備として10月頃より之れを行ふことゝする。
(注 「第7表  「防寒試驗」の表は原本ビューワ23コマ参照)
第8表 同価肥料試験
本試験は経済を基として同価の肥料によつて各の樹種に就て肥料の優劣を検定し、適量試験を行ひ其結果によつて肥料の中(うち)最も経済となる肥料を選び定むるを目的とする。肥料は人糞・人尿・馬糞・米糠(こめぬか)・大豆粕(だいずかす)・蕓苔(うんだい:あぶら菜)粕・鯡メ粕(にしんしめかす:注33)の7種として、1種価1銭5厘のもの(1坪に付6銭の割)、外に無肥の1種を加へて8種としたのである。
(注 「第8表  「同価肥料試験」の表は原本ビューワ23コマ参照)
 
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第9表 土壌試験
本試験は、埴土(しょくど:注34)・壌土・埴質壌土・砂質壌土の5種に分けて、其土壌の性質に依(よっ)て苗木の発育上に及ぼす所の状况を試験して、何れの土壌が其樹種に適当するかを定める目的である。但し土壌の配合などは表中に記する事とす。
(注 「第9表  「土壌試験」の表は原本ビューワ24コマ参照)
 
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第10表 種子大小比較試験
本試験の目的は、種子を大小に区別して同一の粒数を下種し、種子の大小は其の発芽の遅速及び苗木の生育上に如何なる状態、影響があるかを試験するのである。但し種子の大小は之れを一粒づゝ手にて取り分け数へたるものである。
(注 「第10表  「種子大小比較試験」の表は原本ビューワ24コマ参照)
以上の外、次に普通播種試験表を掲ぐこととす。此の方法は前に述べたるが如(ごと)くなれども、目的としては苗木の発芽の遅速及発育上に於て如何なる関係あるかを試験するのである。
(注 「付 「普通播種試験表」の表は原本ビューワ24~25コマ参照)
 
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演習林
本校演習林(注35)は福島町字大澤の山林総反別83町歩にして、地味は不良と云ふ程のことではなけれ共、傾斜甚だ急にして北方に面し雑木が生えて居ます。此地の西境御料林に近き一部の面積1町歩を測量して本年(明治35年・1902年)の演習地とし、4月8日より第2学年生を以(もっ)て雑木の伐り払ひをなし、杉、扁柏(ヒノキ)の苗木を栽植したが、総て地明、植付、手入、運搬などみな生徒の労力によつてなしたのであるが、地明1町歩の内、岩石等の露出せる所があるため、其面積の内へ左の苗木を次の方法で4月16日より4日間に植付した。苗木数量は杉3年生2,000本、扁柏4年生1,500本。植樹法は列間距離4尺5寸にしたる正三角形にして、深さ1尺余りの土を堀り、中に苗木を真直ぐに植へ根部に土を掩ひ表土を足にて踏み付け、且つ其上に蘚苔を置きて根部の乾燥するのを防ぎ、常に湿気を保たしむることとした。元来此三角形植樹は同じ面積の地にて苗木を植栽すること、他の法に比ぶれば大約1割半を増しますから、従つて苗木の生長を良好ならしめるばかりでなく、又一斉に成長して互に密接するからして天然の洗伐(せんばつ:除伐のこと)も早く、且つ地力を保護することは外の方法の及ばない処である。而して造林地の下方には杉、上方には扁柏を植たが、考へて見るに本年植え付けた苗木は本郡上松より購入したので、不良のものが多かつたのであるから、良好の結果を見ることが出来ないかも知れぬ。けれども明年度の分に至つては本校の苗圃の分、或は他より良好のものを取り寄せて栽植する見込である。尚ほ落葉松は5月1日字権現滝尻実習地10余町歩の一部を伐り払ひ、杉・扁柏栽植法と同様に植へ付たが、此地は地質良好にて苗木も宜しければ必ず好結果を得ることであらふ。