NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■木曾山林学校要覧 [翻刻・ルビ・注記] 

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本校生徒は自宅より又は親戚より通学するものゝ外は、凡て寄宿舎に収容し、舎監其他の厳正なる
 
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監督と生徒の自治と相須(あいまち)て善良なる品性を修養し、生徒たる本分を完うし、衛生上にも周到なる注意を払ひ、心身の修練を計る唯一の機関たり。
此目的を達せん為、舍監々督の下に生徒より成る組長・室長及炊事・購買・図書等の委員を置き、各其事務を分担して寄宿舎生活なる自治の一団を組織す。而して組長は此自治団体の主脳にして、舍内に於ける矯風会委員之を兼ね、舎生の風紀・衛生・清潔等に留意し、郵便物の交付・必須品の受渡し・帰省・外出・病気就蓐(しゅうじょく:寝床にはいる)等の出願、其他舍監より命令の伝達舍生より請願等、舍監と舍生との中間に介在して総ての事務を取扱ふ。
室割  舍内を15室に区画し、学年の上下を混同し室の広狭に応じ4名乃至(ないし)7、8名を一室に配し、室内の上級生を以て室長とし其部下を監督せしむ。現在の舎室は今尚不完備にして良否の差違あるを以て、毎月末組長及室長協議の上順次変換して不公平なからしめ、且つ同郷親戚の者を按配(あんばい)し、或は勤惰の模様、意気の合否、健康状態等を酌量して其配置には最も綿密なる注意を払へり。
炊事  炊事委員は毎月輪番に各学年より2名宛之を選定し、3学年生は主として食費の徴収々支の決算・調理の献立等をなし、2学年生は喫飯数の調査、1学年生は飯米の数量を計る等分担して其事に当り、炊夫を雇ふて割烹(かっぽう)せしめ之が指揮監督に任ず。食事は予算の範囲内に於て可成(なるべく)多数
 
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生徒の嗜好に副(そ)ひ、衛生に適せるを以て標準とし、魚肉蔬菜を始めとし凡ての材料は新鮮なるものを選択し、殊に季節物の如きは務めて配膳に上すことを怠らず。其他炊事委員の更迭期、卒業入学の送迎・祝日祭日等には、蕎麦切(そばきり)、萩の餅、赤飯等夫々(それぞれ)季節に応じ其意を表するを以て恒例とす。其食費は毎月6円なるを以て米(1日5合)、味噌(1日20目)(目:重さの単位、匁(もんめ)と同じ)、醤油、薪代、炊事給料等を控除し、1日平均4銭乃至5銭を以て副食物の費途に充つるを得べし。
購買組合  舎内の一室に生徒の日用品即ち『シャツ』・股引・靴下・手袋・文房具・菓子・果実の類より郵便切手等を備へ置き各自の需要に応ず。是等の物品は各商店と特約を結び、普通売価の約1割乃至3割引の廉価を以て購(あがな)ひ得べき便を謀る。而して其基金は職員生徒各1名より金50銭宛醵出(きょしゅつ:金銭を出しあう)して購買委員之を管掌し、其購入販売及収支の決算をなす。
図書室  図書室には多少の図書・新聞・雑誌等を備へ随意縦覧し得ベし。其費用は毎月生徒1人より5銭宛徴収し、一般生徒の志望に徴し書籍の種類を選択して之を購入し、図書室委員其整理保管に任ず。
浴場  浴場の設備は僅(わずか)に1回10名を容(いれ)るゝに足らずと雖も、夏期2、3ヶ月間及実習中の如きは日浴(其他は隔日)し得べきを以て不便を感ずるの憂なし。之に要する燃料は校費を以て支弁す。
 
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時間割  時間割は日の長短其他の事情(例へば実習中、旅行の前後、試験中及其前後)より時々多少の変更ありと雖も、起臥・飲食・入浴・自習・検査・外出・門限等規定の時間は、厳に之を励行して毫(ごう:すこし)も仮借(かしゃく:大目にみる)せず。其合図は凡て振鈴を以てす。
人員検査は予め組長当番の調査せる検査簿に依り、朝夕2回舎監必ず之を執行す。
自習  自習は朝食後1時間、夜1時間半之を課し、予習復習をなさしめ其間は厳に静粛を守らしむ。
掃除  清潔法は生徒中順次更替に当番を設けて、毎日2回室内及廊下の洒掃(さいそう:掃除)をなさしめ、舎外は1週1、2回とし、便所は特に1学年生之に当り毎日1回必ず之をなすこととす。又其他春秋2季は勿論臨時大清潔法を執行し、時々防臭剤・消毒薬を施し衛生に注意す。
身体検査  身体検査は毎学年の始めに於て之を行ひ、疾病あるものは医師の意見によりて夫々適当の取扱になすことを怠らず。
患者取扱  急病患者等に就ては同室内生徒相共同して看護の任に当り、或いは医師の招聘(しょうへい)等迅速に処理し、殊に電話の架設以来一層敏速に運び得べければ、緩慢事を誤るが如き虞なかるべし。
火炉  採暖法は各室炉火(ろか:ひばち)による。毎年11月初旬より翌年3月まで炉を開くを常とす。其間毎朝小使をして炭火を配布せしめ、消燈後炊事夫をして之を撤去せしむ。
 
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郵便物  生徒より発送すべき郵便物は舎内の郵便箱に投入せしめ、毎日朝夕2回之を開函し小使をして郵便局若しくは付近の『ポスト』へ送達せしむ。其他至急を要する場合には各自の適宜に任ず。
消防  近火の際には類焼の虞なき限り、1室1、2名を留め非常を守らしめ、壮健なるもの全部を出して警衛規程に依り消防に尽力せしむるを常とす。
娯楽  平素、碁・将棋・クロック等の室内遊戯器具を備へ置き、規定以外の時間に於て随意之を弄(もてあそ)び、勉学の慰藉(いしゃ:なぐさめいたわること)に充(あ)つ。又室内には書画・盆栽・其他の装飾品の陳列、或は各自の嗜好に応じ小鳥の飼育等をも妨げず。娯楽会、骨牌(カルタ:注15-1)会及忘年会等の催には、全生一室に会食して醜陋(しゅうろう:いやしくけがらわしい)卑劣の行動なからん限りは放談・吟嘯(ぎんしょう:声を長くひいて詩歌をうたう)一に其為(な)すに任し、些(いささか)の検束を加へず。是等寄宿生活をして趣味あらしめ且家庭との懸隔甚しからざらしむる方針なればなり。
入舎準備  舎内に於ける貸与品として机及食器を除くの外は悉皆(しっかい:ことごとく)各自の自弁たるべし。故に本箱・行李等の容器、蒲団は(但、蒲団は一時賃貸の便あり)入舎の際同時に準備するを要す。其他の必須品即ち筆墨類・手拭・歯磨・石鹸の如きは舎内の購買組合に於て悉皆弁じ得べし。