NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

7.教育、人物・伝記

■木曾山林学校要覧 [翻刻・ルビ・注記] 

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修学旅行は学則第13条に示せるが如く、本校の重きを置く所なるを以て之を免ることを得ず。
今、視察の要項個所及経費の概要を挙ぐれば、
( 1)森林の沿革          ( 2)造林法一般に関する事項
( 3)森林の保護に関する事項    ( 4)森林経済に関する事項
( 5)林木の成長及材積に関する事項 ( 6)森林経理に関する事項
( 7)伐木に関する事項       ( 8)運搬に関する事項
( 9)森林労働者の組織に関する事項 (10)木材の需要供給に関する事項
(11)木材工芸に関する事項     (12)副産物の利用に関する事項
(13)竹林の経営に関する事項    (14)地質に関する事項
(15)砂防工に関する事項      (16)地理歴史に関する事項
 
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に就き視察研究せしむ
(1)第2学年は奈艮(神社仏閣・奈良公園)、多武峯(森林業一般)、吉野(林業一般及吉野山参拝、木工学校参観)、奈良県立農林学校、神武御陵参拝、高野山(高野山視察・九度山官行伐木所)、大坂(造幣局・各工場・大坂城・木材市場・貯木場・大坂大林区署)、京都(竹林・北山丸太・風致林・名勝旧跡)、名古屋(白鳥貯木場・燐寸(りんすん:マッチ)製造会社・熱田神宮参拝・製材場・車輪会社・陸軍木工廠(しょう))、滋賀(八ッ尾山砂防工)に、5月上旬を以て往復2週間の旅行をなし、旅費金16円30銭を要す。
(2)第3学年は瀨戸(砂防工)、浜松(楽器製造会社・三方原御料林)、瀨尻(御料林・金原山林・天龍沿岸杉林)、秋葉山(参拝・茶・杉林・推茸栽培)、横須賀(鎮守府)、鎌倉(古跡)、東京(農科大学・目黒林業試験所・農商務省商品陳列所・東京大林区署・特許品陳列所・蟹江貯木場・深川木材市場・深川木材防腐会社・小石川植物園・砲兵工廠・博物舘・動物園)、日光(日光参拝・植物研究)、足尾(坑道木・煙害・鉄索)、浅間(落葉松林)に、5月上旬を以て往復約2週間の旅行をなし、旅費金18円80銭を要す。
(3)第3学年は瀨戸川御料林(天然更新・天然美林・運材・谷落し)、小川御料林(運材・小谷
 
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狩)、阿寺御料林(森林鉄道・鉄索運材)、野尻(製材場・大川狩)に、往復4日間の旅行をなし、旅費金2円50銭を要す。
(4)第1、2、3学年は御嶽山・駒ケ嶽(植物帯・地質・植物採集)に、往復2日間の旅行をなし、旅費金10銭(食料品携行・艱苦(かんく)鍛練)を要す。
百聞は一見に如(し)かず。所謂(いわゆる)実際を離れて学理なし、況(いわ)んや実業教育に於てをや。就中(なかんずく)林業教育に就ては諸般の施設経営に関する実験観察、一朝一夕の之れを能(よく)する所に在らず、数年の後或は数十年の後に於て始めて其結果を見得るが如く、学校の演習林に幾多の実習を課すと雖(いえど)も、其結果を見んは尚ほ歳月を俟(ま)たざれば能はず。故に時代ある林業の発達せる地方に旅行を企て学理と実際との調節を図るの必要あり。之れ教育の効果をして実際に適合せしめ、軈(やが)て卒業生をして社会に出でゝ後、健闘の準備を与ふる所以(ゆえん)にして、修学旅行を企つる所以のもの亦実に此(これ)に存す。殊に本校が木曽天然の美林中に存在するの故を以て、四囲の状况は努めずして之れが研究の資料を提供せらるゝと雖も、彼の吉野の集約的林業とは大に其趣を異にし、天龍流域の比較的粗放の林業とも亦自から相違する所あり。殊に竹林の経営の如き京都府下に於て尤(もっと)も其発達するを認む。砂防工の施設の如き滋賀・愛知両県下に於て研究に値ひするもの多し。是れ如上(じょじょう:前に述べたとおり)の各方面に旅行地を選定し、見聞を拡め識
 
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見を養ひ以て将来に於て実地活動の素地を作らしめんとす。更らに本校は専門の教科の為め地理歴史等の科目を設くるの余地なきを以て、実業に関する科目に依りて此等教科目補習の目的を達せしむると同時に、此の機会を利用して各地の是等事項に関する研究をなさしめ、兼(かね)て旅行地の大部は山地に属するを以て是等の地方の跋渉(ばっしょう:山川をめぐり歩く)は、生徒が困苦欠乏に堪ふるの鍛錬をなさしめ心身の修養に資せんとす。