NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

5.繁盛記、社史、産業の記録

別所温泉誌 [解説] 

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 飯島雪堂の『別所温泉誌』は明治三十三年四月発行にされています。明治時代に入っても江戸時代以来の「木版」本が続きます。同十三年発行の上野尚志『國勢變革提要』は「木版」ですが、上田活版社の印刷と考えられています。しかし、三年前の明治十年には伊藤甲造らが上田活版社を設立しています。
 上田では、いつから活字印刷が主流となったのか、明らかではありませんが、明治二十年代になると、木版と活版印刷の本が併存しています。同二十年代後半になると「活版」がほとんどとなります。『別所温泉誌』が発行された同三十三年ごろには本だけでなく、商店の広告も活版刷りになります。
 当時、上田町にあった印刷所は、上田活版社(活版・銅版・石版)、長谷川活版所(活版)、中沢活版所(活版)、丸山活版所(活版)、花岡活版所(活版)などのほか石版専業の印刷所もありました。しかし、『別所温泉誌』は上田ではなく東京日本橋の勝島活版所で印刷されています。そのためもあってか、序は東京の依田百川が書いています。
 本書は、遠方からの温泉来訪者のことを考えて出版されたのでしょう。目次のあとには別所温泉附近略図と温泉街図の二つが載せられています。次に写真四枚が載っていますが、安楽寺八角の塔は歴史資料としても大切な一枚です。
 本文を見ていきましょう。