NPO長野県図書館等協働機構 信州地域史料アーカイブ

4.地域の記録

■上田郷友会月報 創刊号 [解説] 

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 主として近代の上田小県地域の歴史を系統的に鳥瞰できる史料として見逃せない記録史料のひとつが上田郷友会の月刊誌『上田郷友会月報』です。この『上田郷友会月報』は、新しい国作りをするために、民衆の声を政治に反映する国会開設を求め、その開設を明治政府に約束させた自由民権運動が最高潮から終息に向かうころ創刊されました。創刊した明治18年(1885年)2月1日から昭和19年(1944年)3月25日第686号をもって休刊するまでの59年間発行され続けた日本では希有の長期発行雑誌です。内容は、「本会記事、論説及雑論、雑報、投書、通信」(上田郷友会規則)で構成されています。最新の研究発表や政治、経済、教育、文化などの各論がふんだんに盛り込まれている「論説及雑論」の必読は欠かせませんが、通信員による時々の動きがきめ細かく報告されている「郷里通信」は、近代の上田小県地域の動向を詳細に伝えていることから、「地域のエンサイクロペティア」(「地域百科事典」)とか「上田地方の郷土史研究の重要な資料」といった評価を得てきました。空白期間がほとんどないだけに系統的に地域の歴史をたどるうえで欠かせない一級史料になっています。
 そんな『上田郷友会月報』が、実は創刊をめぐっては不思議な歴史を刻んでいます。なんと、創刊号が3つもあるのです。1つは、明治18年(1885年)2月1日。2つは同年11月。そして3つは明治19年11月29日発行されたものです。「信州地域史料アーカイブス」として取りあげたのは、3つの創刊号のうち、発行の意図や願いが綴られた「緒言」を掲げている明治18年のものです。上田郷友会もこの号をもって第1号としています。3つもあった理由は、出版条例によらない無届け発行であったこと、あらためて官許を得て発行したこと、印刷担当が無断で廃刊届けを出したことによる、というものでした。