石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第五章 殖産製造

第六節 製箔

かくて直し箔の名義による金箔製造は、の諒解のもとに繼續せられたりしが、而も幕府の法律に照すときは尚密造の範圍を脱すること能はざりしが故に、左助は不屈不撓の精紳を以て之が公許を得べく努力したりしに、遂に元治元年二月に至り漸く一歩を進めて、賣箔は尚舊の如く江戸より購入すべきも、の御用箔に限りて打立て得べきことゝなれり。是に於いて御用箔を製せんとするときは、當然その上澄を江戸より購入せざるべからざるに至りしが、その上澄は、江戸の上澄賣渡所が金座より地金を得て上澄に打立てたる後、再び金座に齎して實質量目の檢査を受け、一袋毎に封印を施して賣出すものにして、左助の之を得んとする場合には、何色上澄何程を得たしとの書面を認め、藩用に相違なしとの藩吏の奧書を請ひて提出せざるべからずと規定せられたりき。然るに此の如き煩雜の手續によりて、故らに遠く上澄を輸入するは固より不便なるのみならず、藩用製箔にのみ限定せられて一時に大量の上澄を得ること能はざりしを以て、左助は時々僅少の上澄購入を出願して、幕府の威嚴を害はざらんことを期し、その大部分は之を私造せり。