石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第五章 殖産製造

第六節 製箔

製箔に關する協同經營の方法は、この時左助の提出したる仕法中に詳かなり。即ち左助は嘉永四年の法を踏襲して、再び職方より一口二百目合計二百口の資金を募集し、七月・十二月の二回に利益配當を行はんとするものにして、一年の利益を約三十貫と見圖り、その二厘を取締方左助の役料、三厘を棟取五人の役料、五歩を二百口の株に對する配當となし、而して殘餘を以て弘化二年江戸に於て奔走せる際の古借に對して一歩、嘉永四年以後の新債に封して三歩五厘を當てんとするものなりき。當時の持株と株主とは、二十口宛越野左助・木屋嘉助・津幡屋勘七、十八口越中屋武助、十七口箔屋伊助、十二口山屋伊右衞門、十口越中屋多吉、八口宛能登屋和兵衞・谷内屋茂三郎、七口輪島屋伊助、六口淺地屋吉太郎、五口宛能登屋七兵衞・越中屋宗七・淺野榮太郎・一谷屋次左衞門・谷内屋榮次郎・井上屋甚兵衞、四口宛杉本屋平八・越中屋米次郎・長沖屋伊兵衞、三口宛田井屋忠右衞門・安田屋助三郎越中屋次吉・氷見屋喜一郎にして、その賣捌方に屬するは越野左助のみとし、他は何れも打立方なりとす。此等は皆株札或は職札と稱するものを町會所より下附せられ、その外損箔手入方並錫箔鈖職人たる氷見屋善兵衞、眞鍮・・錫箔鈖職人たる箔屋伊太郎・能登屋安左衞門三人も、亦各一貫目を左助に提供して株札を得たり。是を以て資銀の總額は四十三貫目に上りしが、左助はその中二十三貫目をに預入して保證となし、二十貫目を職方仕送銀に當てたりき。後文久二年十二月左助は更に詳細なる細工場仕法定書を制定せり。
損じ箔手入方並眞鍮箔打立方等細工場仕法定書
 一、職人中等え一ヶ月一人前、あら打二立充相渡可申。且一人前之儀は、あら打相渡申候其日より日數十五日を限、寫上千枚帳場え相納可申。尤右日限に出來不申人者、日數廿日を限、寫上千枚帳場え相納可申事。但日數廿兩之人え者、二ヶ月にあら打三立相渡可申事。
 一、日數廿日を限り出來不申人者、あら打一ヶ月に一立相渡、其月晦日切に寫上千枚帳場え相納可申事。
 一、右之通寫上等日數三通に相定申候得共、其時々仕揚り方により一人前に指加え可申事。但、是迄之一人前相渡置申候人に而も、定之通日數に而仕揚り不申時者、次に相加え可申事。
 一、箔類寫上寸法之儀者、往古より御定有之候所、近來自然与左之寸法に押移り、仕來に相成申に付、直し箔寸法も左之通御出來可成候。
 一、正味三寸七歩四方切拔出來。但四寸箔之事。
 一、正味三寸二歩五厘四方出來。但三寸三歩箔之事。
 一、正味二寸七歩五厘四方出來。但三寸箔之事。
 右平生出來之品に候得共、賣方に寄、何品に而も指圖之通出來可成候。尤右寸法之内少したりとも歩詰り之分者一切取請不申候間、此段豫而御心得置可成候事。
 一、箔類寫上之節、小穴等無之樣成限り奇麗に御出來可成候。是迄小穴或者はぎ合目穴有之候分は賣捌兼申候間、精誠御吟味可成候。且又切口惡く、中には小皺等に而甚不出來之分も有之候間、以來右樣不出來之分者一切取請不申候間、成限り御吟味可成候事。
 一、箔類寫申節は、切紙之小口印、箔表右之上角に相成候樣寫上可成候。是迄區々に相成居候間、已來間違不申樣御吟味可成候事。
 一、箔類出來之上、帳場え御納被成候節、百枚結裏紙之右下角に人々之印し御調可成候。此後印し無之分は一切取請不申候事。
 一、職方作料之儀者、江戸表等より箔類買入直段、並此元箔類賣捌直段等、年柄によつて高下有之候に付、直し箔作料も其時々相定可申事。
 一、作料前貸之儀、是迄無據願に付繰上貸渡來候得共、追々貸方相嵩み、當時店方等之運に指支申候間、以來作料繰上貸渡候儀堅くいたし不申候事。
 一、毎月作料拂之儀、後月十日に相渡可申事。
 一、近頃出箔之儀、相互に振替被成候由。夫故帳面之表不同之入方も有之紛敷、取締方に指障り申候間、以來致振替候儀堅不相成候事。
 一、職人中等病氣等に而細工場え出勤被成がたく儀有之候はゞ、其人々請取置候あら打相添、紙面可指出候事。但病氣等平癒之上、細工場え出勤之節も、右同樣紙面可指出候事。
 一、箔職方之儀者、前々より手間取に候得者、作料何程に而出箔何程屑爲何程相定仕來り候處、一人前一ヶ月あら打二立充相渡置、仕揚之上作料相渡來候處、中に者右あら打自分之品之樣に相心得候人も有之候哉、勝手次第之被成方も有之、先以心得違与存候間、以來古き頭立候人え聞合、前々より仕來通堅く御守、心得違被成間敷候事。
 一、職人中等毎日仕事仕舞之節は、人々火鉢之火火消瓶え入れ、麁抹に相成不申樣、火之元嚴重取仕舞可成候。且又手傳人中曁手傳見習人中之内、其間々々に於て毎日一人充順番相立、第一火之用心且は跡始抹掃除等、入念いたし罷歸り可申事。
 一、細工場内に於て口論等堅く無用之事。但し若年之人遊戲・角力等堅く無用之事。
 一、職人札讓替之節は、双方願書棟取中之内一人奧書を以、職札相添可指出、御聞屆之上職札改而御渡に可相成事。
 一、職人中之内、三十歳以上に相成せがれ無之人は、致養子職方爲見習度候はゞ、棟取申之内一人、奧書を以紙面可指出、御聞屆之上職方爲見習申事。
 一、手傳人中之内、四十歳以上に相成せがれ無之人は、致養子職方手傳爲見習度候はゞ、其段指引人中一統之奧書を以可指出、御聞屆之上手傳爲見習申事。
 一、職人中之内、遠所等え無斷罷越候儀不相成候。已來遠所等え罷越候儀有之候はゞ、日數相定、其段棟取中之一人奧書を以、紙面可指出候事。但し歸宅之上は、早速紙面可指出、且又見習人中も右同樣之事。
 一、手傳人中之内、遠所等え無斷罷越候儀不相成候。已來遠所等え罷越候節は、日數相定、指引人中一統之奧書を以、紙面可指出候事。但歸宅之上は、早速紙面可指出。且見習人中も右同樣之事。
 一、職人中並手傳人中之内、以來轉宅並名替等之節は、紙面を以可相屆事。
 一、損箔手入方並錫箔打立出來方之儀も、金損箔手入方並眞鍮・箔打立出來方同樣、前段箇條書之通、急度御心得可之事。
 一、於細工場、職人中等之内上たる人をも不敬、氣儘に相成居候躰。右者毎日大勢打寄申事に候間、古き頭立候人を敬、相互に猥之言葉遺ひ等不致、諸事貞實にして仁義專に御心得可被藏候。且子弟之分は、其父兄より心得方得与可申入候。若此上心得違之族有之候得者、締方に指障申儀に付、無據細工場出勤留之儀に御達可申所えも可至候間、兼而急度御心得置可成候事。
 一、職方手傳人中等之内、足洗或は初箔祝又は心祝として料理屋等に打寄申儀不相成段、兼而申談置候處、近頃猥に相成申候由相聞え、右者於細工場出し合酒に而も不相成旨、先年被仰渡置候儀も有之候間、猶以來右樣之儀無之樣嚴重御守可成候。若此上にも心得違之人々有之候得ば、前條之通細工場出勤留之儀に無據御達可申上處え可至候間、兼而御心得置可成候事。
 一、職人中等夜遊杯いたし候儀不相成旨申談置候所、今以右躰有之由。何茂毎日早朝より職方に取懸申儀、且は一統之風俗にも拘り、曁細工場之締方に指障り候聞、以來夜遊杯いたし候者は、細工場出勤留之儀に御達可申候聞、此段急度御心得置可成候事。
 一、細工場内より外々え箔屑賣出し候者有之躰及御聞、御締方に指障候に付、先達而一統え被仰渡之通に候間、向後少しも外々え賣出し候儀相成不申候。若重而右樣之儀有之候而は、細工場之締方も相立不申、一統恐入申儀に付、爲念私よりも談置候間、呉々も心得違被成間敷候。尤先年箔方御締に相洩候者は、越野左助へ可申通旨被仰渡置候儀に候間、相互に常々被心懸、右仕法方等に相洩候人々有之候はゞ、早速私迄通達可成候事。
 右之條々職人中等一統不相洩樣御申談、承知之驗夫々請書取立、各分共御指出可成候。以上。
                           金錫箔鈖取締方
    文久二年戌十二月                  越 野 左 助 
      箔 方 棟 取 衆 中
      職 方 指 引 衆 中
〔箔打職株札渡方請書〕