石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第五章 殖産製造

第四節 林業

大聖寺藩に於いて最も林政に熱心なりしものを小塚藤十郎となす。藤十郎素より樹木の栽培に志厚く、山林の盛衰は獨の經濟に關するのみならず、又人民の利益に與ること大なりとなし、文政七年に植物方の吏を置き、藩有林に於ける樹木を補充し、海岸に砂防林を造り、民有地にも亦植林を奬勵すべきことを建言したりしに、前田利之は之を容れ、藤十郎を以て植物方奉行たらしめ、八年松奉行を兼ぬ。藤十郎即ち大に奮勵し、自から山野を踏査して、地味を考へ栽培の法を究め、領内至る所樹木なきの地なからしめんことを期せり。藤十郎の植林に從ふや風雨を厭はず、鎗を土中に立てしめて役夫を督せしに、その柄腐朽して石突を改むること三次に及ぶ。是より後中屢事物を變ずるを小塚の石突といふに至れり。而も甚だしく好結果を得ざりしものゝ如く、藤十郎の著したる江沼志稿に載する自記を見て之を知るべし。藤十郎の歿したるは安政六年十二月にして時に齡七十五なりき。