石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第五章 殖産製造

第二節 農業(中)

植付見分及び草拂見分の際に在りては、所々に村役人を召集して勸農の趣旨を布達す。之を二度の申渡といひ、その内容概ね左の如くにして、言語を温和にし、能く下民をしてその趣旨を理解せしむるを本意とすといへり。

 植付之樣子見屆、草生宜相見ゆる。猶更此末養手入、少も無油斷樣に勢子いたせ。物跡之儀は、別而屎仕込等手入方厚いたし本田に劣らぬ樣仕立申樣に可之。改作之御法に而、一村之作甲乙無之樣仕立る儀を第一に心得、度々領廻りいたし厚勢子いたせ。病氣故障等にて手後に可成ものも有之候はゞ、相互に助合、少しも手後れぬ樣相心得。畠物之儀も准之、手入養無油斷樣勢子をいれ。用水の儀も、流末迄和順に取分、我儘成族無之樣懇に申談ぜ。麥苅入候はゞ、猥に不取散樣心得させ。川除等の儀も、兼々申渡通、成限り自普請にいたし、大破に相成らぬ樣常に心得。浦方山方稼所之儀は、耕作之隙に稼をも出情いたさせ。惣じて御收納皆濟之儀を片時も不忘、偏に一統耕業一途に相勵樣可之儀にて、御上之御恩澤聊もわすれ不申樣、能々指引いたし、勿論衣食住をはじめ、萬端驕りたる儀無之、分限を不失、質朴之風俗に成樣、常々能々申聞せ。一村におゐて、肝煎等は大切之役儀に候間、萬事正直にして下々之もの共厚致教諭、改作不情我儘のもの有之候はゞ早速申斷れ。此外時々御扶持人等より申渡趣、小百姓頭振末々迄も麁略無之樣可相守旨常々申諭せ。勿論改作御法之趣聊無違失相守れ。靜に退け。
〔河合録〕
       ○

 草拂見分致す。猶更養手入無油斷入情樣勢子いたせ。草修理之儀は限りも無之、幾度にても懇に爲取拂、とかく一村之作甲乙無之やう仕立る儀第一に候得ば、其方ども厚心得、領切打廻り〱、手ぬけ無之樣勢子いたせ。用水之儀、豫々申渡通に、流末まで順道に取分よ。堤・川除・波除大破にいたらぬやう常々心懸、浦方獵業鹽稼、尤油斷なく相勵樣に勢子いたせ。別て鹽士村々精誠出情いたし、未進にいたらぬやう相心得させ。秋縮御請之儀、前々申渡通、他組他村を不見合、村切速に御請致す樣心得よ。歩入之儀も、御定歩入落ぬやう、尤精誠相進手早く皆濟いたす樣、一統厚心懸る樣得と申諭せ。御收納米性之儀も、いかにも相撰、念頃に相仕立させ、俵拵・繩・こも等も精誠を盡し宜樣に爲仕立。變地所起返しも可成限り出情いたし、田畑に相仕立させ、惣じて衣食住を初、萬事少しも驕りたる儀無之、いかにも質素之風俗に相成樣、小前末々迄常々申諭せ。別而御仕立村々者 御當節結構被仰付置候儀に候得ば、成限り相勵、早々取立候樣心懸よ。此外改作御法之趣常々相守、御上之御恩澤片時も忘却不致樣能々申諭せ。臨時御扶持人等より申渡趣無違失相守れ。云々。
〔河合録〕