石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第四章 美術工藝

第六節 刀工

承應三年は前田綱紀の家督相續後第十年に當り、その齡十二にして祖父利常監國せり。この時利常は領内の刀工二十二人を選び、各一刀を鍛造せしめて之を先侯利長の菩提所たる越中高岡瑞龍寺寄進せり。蓋し御直言覺書に、『御領國所々大社之内へ御籠物として、御刀・脇刺御認等被仰付候時分、是は加賀綱紀)守武運長久祈祷の爲に仕置候儀と久越(中村)へ御意被遊候。』といへば、瑞龍寺に刀劒を寄進したる志趣も、亦略那邊に存せしかを察すべく、是等皆その忠表に作者の名及び瑞龍院爲寄進仰奉之の文を鐫し、裏に承應三年八月日と刻せり。今侯爵前田家に之を藏し、その目左の如し。

 賀 州 住  兼   若 造   二尺七寸四分    反九分半
 加 州 住  藤 原 家重造   二尺七寸七分    反八分半
 賀 州 住  藤 原 家 忠   二尺七寸六分半   反八分半
 賀 州 住  藤 原 信 友   二尺七寸一分半   反八分半
 賀 州 住  藤 原 景 平   二尺六寸七分    反七分半
 加 州 住  藤 原 清 光   二尺六寸      反七分
 加 州 住  藤 原 家 廣   二尺五寸二分半   反七分
 加 州 住  藤 原 友 重   二尺六寸七分    反一寸
 加州金澤住人 藤 原 信 忠   二尺七寸三分    反九分
 賀 州 住  藤 原 長 次   二尺七寸一分半   反六分餘
 賀州小松住  藤 原 兼卷作   二尺七寸      反七分半
 賀 州 住  藤 原 光 國   二尺七寸      反八分半
 賀 州 住  藤 原 守種作   二尺五寸九分    反七分半
 賀 州 住  幸   昌 作   二尺五寸一分半   反九分半
 賀 州 住  家     次   二尺六寸      反七分
 賀 州 住  藤 原 貞吉作   二尺五寸九分    反八分
 越中富山住  藤 原 重清作   二尺五寸一分    反五分
 賀州金澤   藤 原 信 房   二尺三寸三分半   反六分半
 加 州 住  藤 原 吉重造   二尺三寸五分半   反八分
 加 州 住  藤 原 炭宮兼春  二尺二寸九分半   反五分
 加 州 住  藤 原 家 吉   二尺五寸七分    反八分
 賀州小松住  藤 原 勝 重   二尺七寸四分半   反九分

上記の中、富山住の重清を除く以外は皆加賀の住人なり。以て鍛刀界當時の盛觀を察するに足る。