石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第四章 美術工藝

第二節 陶磁

松田馬宋、諱は元寧、通稱平八、後平四郎と改む。製陶には帝慶齋といひ、挿花には弄愛齋といふといへども、多く馬宋の雅號を以て稱せらる。家世々製筆を以て業とし、龜田商齋と共に春日山燒の窯元と爲り、その創設より廢止に及べり。彼が餘技として製陶を習ひたることは、同家の由緒に『文化三年丙寅十月京都青木佐兵衞に入門』と記され、又彼が製陶法を手記したる陶器總録に『文化五年戊辰中夏改控、金陵陶工松田元寧懷書』とあるによりて知らる、陶器總録は鳥子紙横綴墨附二十三葉の册子にして、その内容は土之部・釉之部・金竈古赤繪九谷之方・金竈イマリ寫赤繪之方・火に入る心得之事・石窯釉の方・樂の方・樂窯寸法等あり。この書原呉山之を謄寫し、その門人高野如月庵の復寫を經、製陶上の一資料として尊重せらる。馬宋の遺製には、今同家に樂燒の白黄色紬に赤色の海老を描きたる茶碗、及び椿を描きたる向附と、丸の内に宋字の陶印とを存す。馬宋天保五年三月一日歿す。