石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第四章 美術工藝

第二節 陶磁

然りといへども、承應二年は明暦元年より遡ること僅かに三年なるが故に、古九谷窯の創始を略明暦の頃にありとするに於いては亦甚だ妨げずとすべく、實は前田利治就封せる後、恐らくは慶安の頃より起れるものなるが如し。飛鳥井清の著したる九谷陶窯沿革誌も、亦こゝに見る所ありたるが如く、慶安年中大聖寺藩主第一代前田利治の時にこの磁器の創成せられたることを言へり。田内梅軒の陶器考に、九谷燒を遠州時代なりとするものも、亦略之に似たり。何となれば遠州は即ち小堀宗甫にして、正保四年を以て卒したるが、慶安は正保に次ぐ年號なるが故に、有名なるこの磁器を有名なるかの茶伯と相連繋せしめたること、亦全く謂なしといふべからざるなり。