石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第四章 美術工藝

第一節 繪畫

藩政の時に及びて探幽狩野守信の北下せしあり。燕臺風雅にいふ。前田利常の時に當り、寛永中守信募に應じて北すること再三、數月本に寓居し、旨を奉じて數百幀を圖す。今存する所、天徳院に喜捨したる四聖像の四掛幅あり。越中瑞龍寺にも數十幀を藏し、金澤士庶有する所も亦尠からず。利常東都の邸に在りて畫を命ずること亦多し。然れども絶えて潤筆の賜なきこと三四歳なり。侍臣公の遺忘を疑ひ、一日閑を得て守信に賜ふべき謝儀の有無如何を以てす。公曰く忘れたりと。命じて白五十貫を出し、之を五篋に納めて輜車二輛に盛り、守信の家に贈らしむ。傍觀の都人過聽して白を黄金なりとし、一時傳播して公の洪量を稱す。實は公の心策に出でしなりと。