石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第十節 佛教

前田氏に在りては、第十三世齊泰・第十四世慶寧薨去に至り、初めて神葬式に依れりといへども、利家以降齊廣に及ぶ間は皆曹洞宗に屬したるを以て、その位牌所又は墳塋は凡べて同宗の寺院に在り。隨ひての之を遇すること極めて厚く、天徳院の五百石を領し、寶圓寺に二百餘石を寄進せられたるが如く、供養の豐饒なること他にその類を見ず。是を以て藩臣にして重職に在る者も亦悉く禪門に歸し、五萬石の本多氏大乘寺に、三萬石の横山氏松山寺に、一萬八千石の前田氏が玉龍寺に、一萬六千五百餘石の村井氏と一萬一千石の前田氏とが桃雲寺に、一萬七千石及び一萬二千石の奧村二家が永福寺に、一萬三千石の長氏が開禪寺に、一萬石の津田氏が廣誓寺に屬する檀徒たり、而して萬石以上の臣僚にして曹洞宗徒にあらざりしもの唯今枝氏あるのみなりし如きは、他に多くその例を見ざる状態にあらずや。之を以て堂塔に頽敗の患なく、桑門に食輪の澁滯を憂へず、身心を擧げて法と佛とに捧げ、教學の振興他宗と趣を異にしたるもの、固より當に然るべかりしなり。