石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第九節 兵學

次いで有澤永貞あり、通稱九八郎・釆右衞門、字は天淵、その亭を高臥と稱す。永貞の母は關屋政春の姉なり。幼より鈴韜を讀み、好んで兵事を談じ、政春の外佐佐木秀乘・山鹿素行に從ひて學ぶこと三十年。甲州流の兵學を究め、延寶三年より元祿八年に至る間に甲陽軍鑑を校正清書し、又その著す所は一切書するに國字を以てし、修辭の瞻縟を省き、捷便の要領を採りて藥籠中の物となせり。是より藩臣の兵を學ぶもの、踵を接して永貞の門に走らざるなし。元祿四年永貞の家に罹り、唯一井一梧を存す。因りて茅字をその傍に構へ、梧井庵と名づく。初め綱紀永貞を登用し、命ずるに軍事上の考査を以てす。永貞乃ち之を機とし、國政に關する意見を草して侯に上らんと欲し、元祿七年より九年に至る間に三卷を草し、十六年更に遺漏を補ひて一卷とし、七月朔日を以て侯の左右に致せり。有澤私考と稱するもの是なり。永貞著す所多く、その目概ね左の如し。永貞正徳五年十一月七日享年七十七を以て歿す。

 軍鑑詳解一卷        末書通解九卷        結要本通解九卷
 軍法之卷抄三卷       軍鑑拔要抄一卷       釆幣傳授之師説一卷
 城取本元抄二卷       城取離格問答一卷      城取私考一卷
 城取品節抄一卷       築城守備全圖五帖      十躰之城圖序一卷
 四戰八城論一卷[武貞 共著]   八城自註一卷        甲陽軍艦攻城地理之圖一帖
 武教全書解六卷       全書篇題之論目五卷     和漢八陣之讀一卷
 秘密要辯四卷        兵法拔書匹夫之抄五卷    案見一卷
 五百騎案見書一卷      四百騎案見之圖四枚     案見自作覺書一卷
 象圖案見人數積一卷     先組相備人數組一卷     三箇條備定輯一卷
 加陽御備定一卷       加陽御小姓一卷       從來極秘傳附抄一卷
 傳附解一卷         兵法修鑑抄一卷       兵法諸軍配自註一卷
 甲陽軍鑑旅亭曉困鈔一卷   旅亭曉困雜記一卷[一名軍 事雜記]      軍學大基一卷
 軍學七徳試註一卷      甲州流兵學雜話録一卷    兵法免状自註一卷
 將軍家歴代略評一卷     京都將軍家歴代略評一卷   姉川合戰前後略譜一卷
 長湫合戰前後略譜一卷    柳瀬合戰前後略譜一卷    關ヶ原合戰前後略譜一卷
 關ヶ原合戰略譜追加一卷   四戰前後書翰二卷      難波問答一卷
 大坂兩陣御日記一卷     殘嚢拾玉集六卷       宿直拾隙抄一卷
 宿直所廼記一卷       湯涌隨筆一卷        有澤永貞日記
 梧井庵年譜一卷       永貞遺訓抄一卷[一名自修若 壯老學術記]