石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第七節 書道

楠部屋芸臺、名は肇、字は子春、通稱金五郎。芸臺幼にして聰慧、三歳にして能く字を知り、髫齓にして書を讀めり。芸臺年十九にして父を喪ひ、人の爲に傭書せしが、紙を得るときは則ち名家の字を寫し、後藏弆する所多く匹儔なきに至れり。芸臺歐法を學び、擘窠大書を善くす。藩侯前田齋廣嘗て之を召し、字を作らしめて觀る。芸臺筆を縱にして揮灑せしに、墨瀋飛びて侍臣の衣を汚せり。侯激賞して善しと稱す。後再び徴されしも病によりて應ずること能はず。乃ちその子邦を召して勞問し、金數片を賜ひしが、芸臺は終に起つこと能はざりき。時に年六十一、實に文政四年九月二十九日なり。その著に加賀古跡考八卷あり。