石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第五節 國學(下)

森田平次、本姓は紀氏、諱は良見、柹園と號す。加賀藩士茨木氏の家臣なり。文政六年二月十五日を以て生まる。少壯皇學を修め、又の史實を研究するの意あり。是を以て侯族士庶の譜牒・典籍悉く之を見ざることなく、餘暇あれば加越能の舊門故家を埰訪し、生涯著す所甚だ多し。その書目概ね左の如く、富田景周の後を承けて我が郷土史界の双璧なり。

 北 徴 遺 文    續汲古北徴録     北 越 遺 文    古文 雜 聚
 温 故 集 録    加國初遺文     加越能古文叢     松雲公埰集遺編類纂
 薫  墨  集    前田家封國證書集録  好 古 餘 録    温故古文抄
 温 故 遺 文    温 故 雜 帖    拾遺温故雜帖     小 松 遺 文
 白山神社考      白山古文録      白山爭論記      白山復古記
 白山衆徒牒状録    白山記攷證      白山舊社員考     白 山 の 考
 加賀諸神社縁起    越前國内神名帳    神 階 考      石浦神社來歴考
 新訂石浦三輪神社縁起 [加賀式内社並國 史現在社調書]    御靈祭の辨    諸神社考
 加賀國郷村社區別帳  神社神官規則     喜 多 師 考    尾山神社來歴考
 佐那武社古文類聚   寺院僧尼規則     寶圓寺下祠堂記    金澤古蹟志
 金 澤 起 原    加 賀 志 徴    越 中 志 徴    能 登 志 徴
 三州歌林名所考    三州郷庄邑名記    國 郷 來 因    國郡沿革
 加貨幣録      前田家判印鑑     公判物寫      柹園拾葉抄
 皇 和 通 暦    雅俗拾穗集      柹園 雜 抄     日本靈異記頭注
 萬葉集人名考     萬葉事實餘情     越中萬葉遺事     越中萬葉遺事附録
 柹園拾芥集      北海邊要考      宗良親王記事     尚 齒 會 記
 大夫坊覺明考     加國老叙爵考    遺誡鈔      北越類聚史略
 續々漸得雜記     扶桑長壽録      金澤長壽録      國 事 雜 抄
 諸  王  傳    維  新  録    明治職員令並藩治職制 金澤藩名家由緒
 加越能氏族傳     加越能書籍一覽    鞬橐餘考々證目録   御三代御戰功の記
 御三代御動座之記   同御官位補任之記   松 風 要 抄    茨木譜備考
 澄源君年譜      寛量君年譜      寛性君年譜      藻  鹽  艸
 落 葉 の 露    陽廣公遺事

置縣の後、平次石川縣に屬官たり。時に舊幕府領白山々麓十八ヶ村の所屬に就いて疑義あり、福井・石川二縣共に吏を派して之を檢せしむ。平次任に當り、その主張する所明確、是を以て諸村石川縣に編入せらる。又鹿島郡小田中村に親王塚あり、平次之を考證して具申し、遂に大入杵命御墓と治定せらる。官を辭するの後、前田家の爲に家録編輯の事を助け、又上して日本紀・萬葉集等を講じ、大にその優待を受く。平次老齡に及びて耳目尚聰明、筆を採りて夜を日に繼ぎ、死に及ぶまで手に卷を釋てざりき。明治四十一年十二月一日歿す、年八十六。
能登七尾寓居即吟
 見わたせば木々のもみぢ葉色ふかく浪間ににほふ能登の島山

明治二十八年一月二日試筆
 丈夫のたけきいさをゝ後の世にもろこし人もかたくつぐがね


森田平次肖像 金澤市森田外與吉氏藏