石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第五節 國學(下)

新井祐登、號は白蛾、京都の人。その傳は漢學の條に擧げたり。祐登又和歌を詠じ、國文を作ることあれども、素よりその本領にはあらず。寛政四年五月歿、齡七十九。
京都火災の記
 天明八つのとし、むつき下の九日、曉かけて火あり。明ればつごもり、四面こと〲く熖となり、夜半に及びて、大宮作りまでも殘りなく、都はすべて灰塵となりぬ。また明れば、きさらぎ朔日、晝時も過なむころより、火勢やう〱とゞまりぬれども、誰かはひとり住むべきやどりもなし。逃迷ひて死するもの數知れずとなむ。ながらへたる人は、住どころもとむとて、わづかのゆかりをしたひ、四方の國々へ、ちり〲につどひ行もの、幾ばくちたり、あはれてふも更なり。やつがれは大津のさとに、親しきゆかりの家有りて、しばし假居し侍り。四日の月をながめ、みやこの空もなつかしく侍りてよめる。
  おもひきや此衣更着の初月を大津のさとにあふぎみむとは
 又其時のやうをおもひて。
  花ならでみやこの春はもみぢ散る涙のしぐれたえぬもろ人