石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第五節 國學(下)

前田重靖、有栖川一品親王を師として國風に長じ、著す所の拾藻和歌集は今尚存す。
江 春 月
 にごりなく猶すみの江のむかしより霞むならひや春の夜の月

梅   風
 獨ねの夜半のまくらにほの〲とさそふはしるし梅の下かぜ

紀   行
 癸酉のとし秋八月、公の御いとまを申たまはりて、わが國の旅のおもむく事になん侍りける。同十六日東都のをいづ。しるべあるきはみとひもてきて、うち送るも、さすが立出がたき心ちぞする。今朝しも打しぐれたる氣色にて、雨をやみなうふり出ぬ。庭の梢をかへり見れば、まだ頃淺き色なれば、又來ん秋のちしほなど、ひとりごちつゝ、駒うちはやめて、板橋の方にさしかゝれば、しづが屋の煙いぶせきさま、いと哀にみすてがたし。戸田川を越ゆるとき雁を聞いて。
  出でゝこし跡にもつげよ天つかりとだのわたりを今越ゆるとは
   (下 略)