石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第五節 國學(下)

小瀬良正の詩に長ずることは、前に之を言へり。良正又國文を能くし、三絃の歌詞に及ぶ。享保三年八月十日歿す、年五十。
賢人すがゝき
 岐山に鳳凰囀りて、麒麟を追出す狩の道、直ぐなる聖代、堯舜禹湯に文王や、丹朱の不行迹、天竺浪人孔子樣、惠王聊か受つけず、淵明菊好き、茂叔は落葉に酒受て、樂天押へます、玄宗鼻乞ふ楊貴妃、殆んど繋れて、馬嵬の草葉に、墓なや思ひに置そふ露涙、子思子の工夫は、孔門傳授の眞法か。
 七賢打込む竹藪や、蓮を愛する周茂叔、三徑荒れても、松菊色よく咲初めて、淵明賞美なり。さりとは草木黄ばみ落、月には漕出す樓船や、羽觴を飛ばする樂天、唐(カラ)での酒喰ひ、詩作も酒臭し。屈原汨羅に、濁世のほこりを打拂ひ、小人眞顏に、巧言令色飾れども、仁には違ふと、賢人座敷へうけつけず。