石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第五節 國學(下)

葛卷昌興の詩文に秀でしことは、已にこれを言へり。昌興和歌に長じ、元祿六年その罪を獲て寺西宗寛の家にせらるゝや、花に對して懷を述べ、之を莫逆の友竹田忠張に贈る。

 住みはてん身とも思はで世の中にむかしは花を植てけるかな

又その謫所に遷さるゝの遲きを嘆じて志を述ぶ。

 呉竹のひとよとばかりおもひしにいくあかつきの夢結ぶらん

能登蟄居中、

 春すぎてふかき緑にまじりなばあたら櫻の名をやけがさむ

時人一讀して酸鼻せざるなし。その家集を野草玉露といへり。寶永二年三月四日歿す、年五十。