石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第三節 漢學(下)

横山政孝、字は誼夫、致堂と號す。通稱は藏人。政孝の父を政寛といひ、政禮の子なり。字は子緯、白華と號し、富田景周に就きて詩を學び、奇才あり。政孝江都に于役すること前後六たび、前田齊泰の世子たりし時その傅となれり。天保七年歿す、年四十九。政孝最も易を好み、亦詩を善くす。平生古賀侗庵・柴野碧海・永根伍石・大窪詩佛・五十嵐竹沙等と交る。その詩集中に、蓮湖に遊ぶの詩多きを以て、伍石嘗て蓮湖長の印を刻して之を贈る。因りて自ら蓮湖長翁と號し、晩年喜びてその印を用ふ。文畫を善くし、好みて花卉を描く。是れその性花卉を愛するに因る。政孝の妻蘭蝶、名は桂、字は依之、夫に學びて亦詩を好む。その相唱酬せるものを刻して海棠園舍刊といひ、政孝の詩集を致堂詩槀といふ。其の他詩律證・詩餘小譜の著あり。繼室蘭畹、名は榮、亦詩を善くす。
偶   成                       致    堂
 澹中滋味向誰談。靜裏工夫只自參。吟苦不殘醉醒。新霜落瓜破黄柑

秋夕即興
 歛盡山雲晩晴。滿襟涼意十分清。月從雨光偏好。疾到秋體轉輕。帋上鴉栖我題句。袖邊泉咽婦横箏。誰知官暇多幽事。幽事猶能日有程。

雨中雜興                        蘭    蝶
 今日春陰恰可眠。一番纖雨乍來天。閒窻起坐烏雲滑。時有金釵落枕邊

病 中 唫
 病裏得閒得句多。時教小婢又煎茶。詩書枕畔渾狼籍。繞坐一香篆斜。

失   題                       蘭    畹
 金風細々露溥々。蟋蟀聾中夜欲闌。片月低時卷簾坐。紫薇花影上欄干