石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第三節 漢學(下)

深山安良、通稱加右衞門、字は孟明、壺峰又は陸渾と號す。越中今石動の人、初めその地に於いて藩士篠島氏の騎吏となり、後金澤に移る。天性詩に長じ、その格調雄偉一時の選たり。凡そ加賀藩の學士、百五十年來藝苑に翺翔するものありといへども、多くは理學の膠する所となり、文は必ず經典を主とし達意を專とし、詩賦亦用語を經傳に求め佶倔句をなし、敢へて優麗雅典を期せず。故に感興偶發して吟咏するものあるも絶えて金石の遺響なく、その詩人として見るに足る者は前に獨小瀬良正あるのみ。而して安良晩に出でゝ專ら詩賦を以て生命となし、深沈奧妙北陸詞壇の牛耳を執ること十有五年に及び、聲名大に著る。前田重熈殊に安良の才を愛し、花朝月夕數〻宴を賜ひて詩を作らしむ。當時詩賦の盛、蔚然として前後に超越せるもの、實に安良の力なり。寳暦四年五月二十四日歿す。富田景周その遺詩を編して、陸渾詩抄四卷となせり。
十六夜藥王寺陪藤堀二公
 藥王高閣倚秋空。弄月登臨犀浦東。地入琉璃佛界。雲擎寳鏡仙宮。魚龍光動澄潭水。烏鵲寒飜祇樹風。坐久彌知清淨境。王家爽氣亦相通。

秋夜應
 御莚夜侍漏聲長。珠閣金屏紅燭光。初見君恩更無極。萬年枝上不霜。