石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第三節 漢學(下)

中西尚賢、字は士希、鯤溟と號す。天性放縱にして酒を好み、赤貧洗ふが如くにして、書素より購ふに由なし。即ち市に至り、書賈の店頭に就きて之を讀む。長ずるに及び藻思蔚發、筆を把れば一氣に七律十餘篇を呵成す。四座皆愕かざるなし。明和元年韓人の來聘するを聞き、千里獨歩長崎に往きて之と贈答す。尚賢歸路浪華を經、蒹葮堂主木村巽齋が好古の癖あるを聞き、刺を投じて見んことを求む。巽齋その蓬頭襤縷の一寒生なるを以て延かず。尚賢乃ち一詩を以て之に挑む。是に於いて巽齋倒屐して迎へ、酒を置きて相居ること三日。別るゝに臨み贈るに文房の清具二三を以てせり。是より尚賢の聲價大に彰る。初め前田直躬の臣となり、後に村井長穹に仕へき。
登 嶽 賦
 夫何洪基之旁魄。白嶺屹兮其中天。求人跡而稀疎。由鳥道以夤縁。雲靄要途以窃窕。巨石當路而紆綿。鴻鵠冲兮其無戻。神禽翔而集于嶺。下蒙籠兮曠蕩。上突兀而如懸。稍攀恠柏以盤桓。或援靈松而屯邅。望別巘之嶙峋。掛瀑布之長川。臨崕谷之〓岈。括有流而廢源。初漱牛頭之温液。終挹尾添之飛泉。凌壒埃之混濁。服〓氣之耀然。仰玉堂兮與金闕。瞻寳樓兮欲昇僊。於乎神嶽之秀。沒世其不諼。還反顧而踟蹰。契巨靈他年。頌曰。造化鍾秀。維嶽降神。奇巖削成。珍禽擾人。雲起膚寸。雪積萬仭。薀異蓄靈。三越寔鎭。