石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第三節 漢學(下)

土橋辰眞、字は〓聾、畊雲と號す。越前の人、故ありて加賀藩に來寓し、清貧自ら甘んじ、傭作して自ら給す。嘗て淺野川橋梁再造の時、その備中に在り。時に八月十五日、辰眞河畔を徘徊しつゝ一詩を賦して曰く。

 高架長橋淺野川。群山清影水涓涓。自疑身假夜光立。正是金城八月天。

是によりて聲價俄かに昻る。その胸襟を叩けば頗る經義に精し。一時奧村脩運青地齊賢等之に資給し、一草蘆を卯辰山下に結びて住せしむ。因りて自ら山下散人と號す。鳩東之に素綿を送る詩あり。

 山下結盧容膝安。老來求道不官。素綿一束休薄。寄去爲君防歳寒

乾祐直村瀬克忠等その門に出づ。
以上列記せるものは、前田綱紀治世に當り、他より招聘せられて儒職となり、若しくは流寓し來りて、帷を下せるものゝ最も主なるものなり。今更にの卿大夫又は士人にして文學に貢献せるものを擧げん。